ニートな生活 A

ニートな生活

題名

ニートな生活」

英語題名

Neet in Osaka City」

「出演者」

李 秀夫(51)男

李 慶夫(15)男

李 早紀(14)女

李 可奈(12)女

徐 勝子(79)女

徐 明美(59)女

徐 清美(57)女

李 和子(41)女

吉積裁判官(42)男

大山弁護士(72)男

朴 為吉(69)男

朴 弘子(45)女

朴 留吉(30)男

朴 小吉(28)男

山田調停員(63)男

林 調停員(55)女

藤川佐知子(38)女

民事訴訟事務室香川女性職員(35)女

幼稚園児たち

職業安定所職員(35)男

IT会社職員(35)男

マンション管理会社職員(41)男

トラック会社職員(51)男

請負会社職員(51)男

集金会社職員(55)男

化粧会社職員(35)女

コンビニ店員派遣会社職員(26)男

キャンパス・クラブ職員(35)男

鉄工所職員(45)男

野菜栽培の男(45)男

足組取り付け会社職員(51)男

パチンコ屋店長(35)男

ラーメン屋店主(55)男

株式教室講師(38)女

為替セミナー講師(51)男

福祉課生活環境担当(28)男

姫井理事長(61)男

村井事務職員(35)女

女性受講者たち

男性受講者たち

梶山先生(43)男

鶴見宏経理担当先生(61)男

山田純恵(35)女

大津恒夫(28)男

荒井満夫(28)男

柿田正子(27)女

鶴見先生の父親(63)男

鶴見先生の母親(56)女

掃除のおばさん(56)女

USJの司会者(45)男

宮本武タクシー運転手(35)男

バーのウエイター(41)男

パチンコ青木店長(38)男

鈴木稔(21)男

パチンコ女子店員(28)女

JRA女子職員たち

御堂筋のタクシー運転手(51)男

西泰造(71)男

藤川富士夫(45)男

藤川富士絵(13)女

藤川幸絵(12)女

テレビレポーター田辺康樹(35)男

大岡忠暢裁判長(61)男

金正得弁護士(58)男  

橋守検事(35) 男

傍聴席の人たち

徐 波子(72)女

徐 玉子(69)女

徐 浜子(68)女

徐 亀子(66)女

徐 波子の夫、李 霊山(73)男

徐 玉子の夫、金 海山(69)男

徐 浜子の夫、金 成哲(70)男

徐 亀子の夫、趙 容権(61)男

葬式場の職員たち

火葬場職員田辺肇(29)男

火葬場の職員たち

テレビの女性歌手(26)女

「あらすじ」

大阪に住むタクシー運転手だった李 秀夫は、離婚訴訟の真っ最中。

妻に、実家へ逃げられたのです。

子供は、長男高1を筆頭に、長女、次女。

現在、妻に、長女、次女を、引き取られ、

秀夫は、長男といっしょに、79歳の母親の家に、

居候しています。

離婚成立後、家庭裁判所で、

長女、次女の面談調停の結果、

1ヶ月1度、会うことが、許されます。

1年ぶりの再会ですが、

娘たちは、会うことを、面倒くさがります

父親の立場は、ますますなくなっていきますが、

長女が、高校受験なので、勉強を、教えます。

これからは、経理が、必要と、

長男を、商業高校に、入れたのですが、

秀夫自身、簿記を、全く、知らないので、

現在、失業中を、利用して、

ハローワーク紹介の経理学校に、

3ヶ月、通うことになります。

そこで、

かつての信用組合の同僚であった

藤川佐知子と、偶然にも出会います。

秀夫は、恋心を、持つのですが、

3ヶ月経ち、卒業して、

離れ離れになります。

佐知子の職場を探し出し、

ストーカー行為を、

始めます。

結局、韓国籍の佐知子は、

日本人男性と結婚していて、

二人の娘が、いることを知り、

失意状態となります。

夢の中で、

佐知子の夫殺しの犯人として、

死刑判決を、受けます。

そんな夢ばかり見ている最中に、

母親が、なくなり、

葬式には、女系家族の大勢の親戚女性たちが、

集まり、泣き声と怒号の中、

秀夫は、これからは、真面目に、

生きることを、誓うのでした。

それでも、そう簡単に、

人間を、変えることはできません。

青い空、日課の堤防の散歩中、

あいも変わらず、

秀夫は、犬に、追いかけられているのでした。

スタート

1 大阪・中ノ島(昼)

  レンガ造りの中ノ島公会堂。

  水中アクアライナーが、進んでいく。

  蒸気船が、ポッポッポッと、

  音をたてて進んでいく。

2 裁判所正門前

  裁判所玄関。

  高1の息子、李 慶夫のナレーション。

慶夫(N)「僕は、中学まで、朝鮮中学に通ってました。

 今は、高1。大阪の高校に通って、硬式野球部で、

 ファーストを、守っています。

 この物語は、

 在日2世のタクシー運転手の父 秀夫が、

 母に、逃げられて、

 僕は、父に、妹二人は、母に、引き取られ、

 別れる別れないで、

 調停から裁判となるところから始まります。

 教育熱心な父は、、突然、

 法律、経済、パソコン、語学と猛勉強を、

 始め、それによって、

 周りにいる人たちに、

 父が、がんばればがんばるほど、

 迷惑を、かけてしまう、

 聞くも涙、話すも涙じゃなくて、

 人に話せば、大笑いされてしまいそうな物語です。

 どうぞ、ごゆっくりご覧ください」

 

3 裁判所内廊下

  開廷前、人々が、椅子にすわっている。

慶夫(N)「これが、僕の父です」

4 裁判所内法廷

  法廷には、裁判官と、秀夫、向かって妻側の大山弁護士、

  書記官が、いる。

吉積裁判官「離婚を、考えてくれませんか?」

秀夫「離婚は、しません」

吉積裁判官「結婚生活が、成り立ってないでしょ。

 奥さんの弘子さんは、娘二人を連れて、

 実家に帰られた。あなたは、長男とおばあさんと、

 暮らしている。答弁書によると、

 タクシーの運転手をされて、不況の中、

 給料が、減少し、借金返済のために、家を、売って、

 支払った。あなたと、いっしょに、

 生活するつもりは、ないということを、

 書かれてます。弁護人、間違いありませんね」

大山弁護士「しかるべく(ニヤリ)」

秀夫(M)「何が、しかるべくや。自分で、

 書きやがって。こっちは、弁護士なしや」

  秀夫、手を、上げる。

吉積裁判官「はい、どうぞ」

秀夫「判決、出せばいいんじゃないですか?」

吉積裁判官「わかってますよ。あなたに、

 言われなくても、出しますよ。だから、

 何回も、言ってるように、結婚生活が、

 成り立っていない。離婚してほしいと言っている。

 あなたは、離婚をしない。なぜですか」

秀夫「民族教育のためです。何回も言っているように、

 朝鮮学校の近所に引っ越してきて、

 通わしていたのを、中学校から、

 日本の学校に、無理やり、行かしたわけですよ。

 民族教育をさせない親を、裁判所が、

 親と認めるんですか?

 中国で、日本人は、日本人学校へ、

 行かせているでしょう」

吉積裁判官「離婚と民族教育を、

 別々に考えてください」

秀夫「どっちが、子供のために、正しいのか。

 判決出してくれたらいいんですよ。

 最高裁判所まで、行きますよ」

吉積裁判官「何、言ってるんですか。

 これは、離婚裁判なんです。

 調停に、あなたが、来ないから、

 裁判になったんでしょ。

 奥さんと、あなたの問題なんです。

 奥さんと、話しましたか」

秀夫「話してません。

 (M)話が、できるんなら、裁判なんかなるかいな」

吉積裁判官「なぜ、話さないんですか」

秀夫「別々に、暮らしてるからです」

吉積裁判官「いま。電話で。話せるでしょ」

秀夫(M)「スイッチ、押したろ」

  秀夫、机の下で、小型テープレコーダーのスイッチを、押す。

吉積裁判官「子供の親権を、

 決めなくちゃいけないんです。  

秀夫「はい、よろしいです」

  突然、妻の父である朴 為吉、弟の留吉、小吉が、

  法廷内に、入り込んでくる。

為吉「どこや、どこや、俺のすわるとこは、どこや」

  指突きたてながら、どなる。

  留吉、小吉も、真似するように、どなる。

留吉「どこや、すわるとこどこや」

小吉「(どもりながら)どどどこや、おおおれの

 すすすわるとこどどどこや」

為吉「どこや」

  加藤書記官が、傍聴席に、案内しようとする。

為吉「邪魔や」

  為吉、加藤書記官の書記官服を、破り、

  ネクタイを、引っ張って左右に揺らす。

為吉「なんや。なんや。なんや」

吉積裁判官「やめなさい」

為吉「どうや。どうや。どうや」

  加藤書記官を、ネクタイを持って、

  投げ飛ばす。

為吉「わかってるのか。こら」

  為吉、すわっている秀夫を、

  指差して、面と向かう。

為吉「おい、こら」

留吉「おい、こら」

小吉「おおおい、こここら」

為吉「わかってるのか。

 おもえんとこのおばはん、えげつないの」

  為吉と秀夫、面と向かい合う。

吉積裁判官「あなた、誰ですか?」

為吉「俺は、こいつの義理の父親や」

留吉「義理の父親や」

小吉「ぎぎぎりのちちちおやや」

吉積裁判官「傍聴席にすわってください。あなた、

 何をしに来たんですか?」

為吉「はよう、離婚せい言いにきたんやないか。

 母子家庭手当てが、下りひんやろ」

吉積裁判官「それを、言いに着たんですか」

為吉「そうや。あんた、わかれへんのか」

留吉「わかれへんのか」

小吉「わわわかれへんのか」

吉積裁判官「出てください」

為吉「なんで、出ていかなあかんねん」

吉積裁判官「出て行かないなら、傍聴席で、

 静かに、すわっていてください」

為吉「あほらしい。すわれ言うたり、出て行け言うたり、

 うるさいなあ。こんなかび臭いとこ、いてられるか。おじゃま」

留吉「おじゃま」

小吉「おおおじゃま」

  為吉、扇子であおぎながら出て行く。

  留吉、小吉も、出て行く。

  大山弁護士が、秀夫を見ながら、笑っている。 

    

 

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