パクさんとタクシー

映画「在日家族鬼物語

この作品は、フィクションです。

実在の人物・団体・事件などとは、

いっさい関係ありません。

シナリオ枠組み

前奏 5分

起 公園少年野球とタクシー。

転 泥棒と警官とホームラン。

承 追いかける。

結 泥棒とタクシーと速いタクシー。

第一楽章

提示展開部 15分

平日常

起 朴鬼タクシー営業。

フェラーリ鬼登場。

フェラーリ鬼競争。

結 どこまでも走れ。

非日常

起 朴鬼流し営業。

転 流しタクシー同志競争。

承 お客様横取り。

結 走り回れ。

新日常

起 同僚に注意受ける。

転 気にしない。

承 売り上げ第一主義。

結 あおり運転。

再現部 15分

平日常

起 会社帰る。

転 同僚全損死亡事故。

承 会社組合廃業団体交渉。

結 団体交渉中断。

非日常

起 係長鬼怒りの反撃。

転 会社滅ぼすつもりか。

承 社長廃業推進。辻褄合わない。

結 タクシー労働者拒絶。

新日常

起 パトカーと救急車。

転 病院行き志願。

承 病院同僚死亡

結 驚きの一日だった。

第二楽章 緩間奏

提示展開部 5分

起 急げ買い物

転 ある時は鬼買い物

承 ある時は天使買い物

結 缶コーヒー飲んで帰ろう

再現部 5分

起 コンビニ弁当だけじゃない

転 スーパー買い物

承 ホームセンター買い物

結 ストレス発散買い物

第三楽章

提示展開部 15分

平日常

起 家に入っても忙しい

転 炊事洗濯掃除

承 身体動かして健康にいい

結 Give And Give

非日常

起 食べて食べて食べまくれ

転 鬼のように食べろ

承 天使のように食べろ

結 姉妹も腹一杯動けない

新日常

起 眠るだけ

転 皆眠っても米洗い

承 ニラ千切り

結 泣けるたまネギ

再現部 15分

平日常

起 鬼のように天使のように

転 鬼新人研修どちらが鬼だ

承 人生貯金箱

結 やさしくやさしく

非日常

起 倒産会社に新入社員訳あり?

フェラーリ競争運転の腕前見せてやれ

承 安全運転重視です

結 友達暴走族出迎え

新日常

起 仕事鬼運転だけは勝つ

転 安全運転

承 会社がどうなろうと安全運転

結 先代社長秘密旅行

第四楽章 激間奏

提示展開部 5分

起 開店休業

転 息子社長と先代社長対決

承 借金タクシー会社

結 返済は社員乗務員のファイト

再現部 5分

新型コロナウイルス誰もいない

転 蛇行運転とチップもらい過ぎ

承 飛ばせ関空

結 会社呼び出し

第五楽章

提示展開部 15分

平日常

起 辞めてください

転 あなた必要ないです

承 地下牢から出すな

結 誓約書を読め

非日常

起 どうして俺はバカなんだ

転 同僚からも組合からも非難される

承 会社の恥だ

結 出て行け

新日常

起 二度と来るな

転 同僚高笑い

承 早く辞めろ

結 ストレス発散コンビニ弁当買い

再現部 15分

平日常

起 家前の缶コーヒー

転 長女登場

承 最低労働賃金男にとって面目なし

結 何がフェラーリ

非日常

起 負け犬追求

転 父親失格相手にされない

承 情けない最低父親

結 考えない

新日常

起 考えないことが仕事鬼

転 許さない元妻登場

承 少しは考えろ

結 勘弁してください

第六楽章

提示展開部 15分

平日常

起 老婦人整骨院

転 皆鬼だらけ

承 鬼鬼鬼

結 助けてくれるのは家族だけ

非日常

起 やっとわかったのか

転 盛大に結婚式やってみましょう

承 根性せこいから安く安く安く

結 鬼全員登場してもらってご祝儀もらいましょう

新日常

起 知らないのは君だけだ

転 成長しています

承 結婚式じゃなくお祭り騒ぎ

結 楽しそうですね

再現部 15分

平日常

起 日頃の鬱憤晴らしましょう

転 泣いてください

承 笑ってください

結 ダンスダンスダンス

非日常

起 鬼だけでも飲もう

転 寂しいねえ

承 楽しかった

結 再度タクシー営業

新日常

起 鬼たちの堤防散歩

転 前見て歩いて行こう

承 いい風吹いてます

結 誰もいない

終奏 5分

起 東京銀座

転 夜ネオン街

承 タクシー走る

結 朴タクシー走って行く

映画「在日家族鬼家族」

出演者

少年野球チーム

山本五郎 35

a家族

泥棒山田A鬼 33

警察官鬼

朴一根 63

b家族 母親 息子 姉 妹

お客様鬼

タクシー運転手鬼

辰巳大蛇社長鬼

c家族 先代社長と愛人

山九

徐山子

d家族

運転手同僚鬼

辰巳蛇蔵32歳

e家族

喫煙鬼。

お客様乗せない鬼。

睡眠鬼。

帰って来ない鬼。

仕事否定鬼。

家に帰れない鬼

家ご飯鬼。

結婚しない鬼。

貯金鬼。

海外旅行鬼。

ボルボ通勤者鬼。

考えない鬼。

眠らない朝野球鬼。

車掃除鬼。

ゴルフクラブ収集鬼。

ラクション鳴らし鬼。

大音声ラジオ鬼。

ちゃうかな口癖鬼。

毎日長距離乗車鬼。

前職話鬼。

出庫しない鬼。

組合選挙鬼。

常時薬鬼。

金円寺真平銀行支店長

f家族

白馬熊男東京大手タクシー会社社長

朴和希

朴水恵

崔虹子

谷川菊江

谷川静雅

金髪女性たち

サントス・オハラ

金順子

母親李鳳淑

父親金和男

シナリオスタート

1 野球公園 朝

少年野球。

試合している。声援。

ピッチャー投げる。

バッター打つ。

ホームラン。

2 道路

ホームランボールが、転

がって行く。

山本タクシー横に転がる。

タクシーに当たる。

大声「泥棒!」

黄色背広黄色ズボン黄色

ネクタイ黄色シャツの

男。

タクシー後ろから走って

来て、公園横曲がる。

警察官一人、追う。

黄色背広泥棒が、はるか

遠く走る。速い。

3 タクシー中

山本が、ラジオで国会放

送を聞いている。

後ろドア叩く音。

「ドンドン」

山本、反応良く左後ろド

ア開ける。

黄色背広泥棒山田、乗り

込んで来る。

泥棒「南、特急。急いでくれ」

4 国道26号線北向き

泥棒乗せた山本タクシー

走って行く。

一台のタクシーが、山本

タクシーを、追い越して

行く。

泥棒山田「追い抜かされてどないするねん。スピード上げろ」

5 クレジットタイトル

「在日家族鬼物語

6 国道26号線北向き

朴タクシー。

歩道お客様、手が挙が

る。

朴タクシー停まる。

後ろ左ドア開く。

女性客、乗り込む。

朴「ありがとうございます」

泥棒乗せた山本タクシー

が、朴タクシーを追い越

して行く。

7 御堂筋

朴一根タクシー、男性客A乗せる。

一根「どちらまででしょう

か?」

男性客A「大阪駅

女性客乗せる。

一根「どちらまででしょう

か? 」

女性客A「南海なんば駅。お

願いします」

一根、男性客乗せる。

男性客B「近鉄なんば駅

一根、女性客乗せる。

女性客B「本町」

一根、男性客乗せる。

男性客C「堺筋本町

一根「ありがとうございま

す」

一根、女性客乗せる。

女性客C「淀屋橋

フェラーリが、爆音立て

て、一根タクシー追い抜

いて行く。

一根「ありがとうございま

す」

男性客D「道修町3丁目ガス

ビル」

一根「ありがとうございま

す」

一根「ありがとうございま

す」

女性客D、乗り込んで来

る。

女性客D「備後町

一根「ありがとうございま

す」

男性客E、乗り込む。

一根「ありがとうございま

す」

男性客E「南船場3丁目」

一根「ありがとうございます」

フェラーリが、爆音と共に走り去る。

男性客F「すごい音やなあ」

一根「ありがとうございます」

男性客G「日本橋

女性客E、乗り込む。

フェラーリが、通り過ぎる。

自転車警察官。

女性客F「心斎橋大丸」

一根「ありがとうございます」

男性客H、乗り込む。

男性客H「宗右衛門」

女性客G、乗り込む。

女性客G「三津井寺」

男性客I、乗り込む。

一根「ありがとうございます」

男性客I「八幡」

女性客H「周防町」

男性客J「備後町

女性客I「平野町」

男性客K「高麗橋

女性客J「北浜」

男性客L「谷町四丁目

女性客K「阿倍野ハルカス」

男性客M「住吉大社

女性客L「千躰」

男性客N「長居球場」

女性客M「我孫子

男性客O「喜連瓜破

女性客N「平野駅

男性客P「流町」

女性客O「長吉出戸駅」

男性客Q「杭全」

女性客P「生野」

男性客R「緑橋」

女性客Q「赤井」

男性客S「放出西」

女性客R「都島」

男性客T「野江内代

女性客S「天六

男性客U「扇町

女性客T「ナビオ前」

男性客V「阪急三番街

女性客U「中之島公会堂

男性客W「リーガロイヤルホテル

女性客V「南堀江」

男性客X「中開」

女性客W「北加賀屋

男性客Y「住之江」

女性客X「大正」

男性客Z「天保山

女性客Y「南港」

女性客Z「フェラーリかっこいい」

8 国道梅田新道

他社タクシーの後ろを朴一根タクシー走る。

女性客F手を挙げる。

横取り。他社タクシー、前で停まるが、一根タクシー、後ろで停まる。

女性客、朴一根タクシーに乗り込む。

他社タクシー、クラクション鳴らし続ける。

一根「ありがとうございます」

女性客F「日本橋。一度乗ったことある」

一根「覚えてないです」

出発。

他社タクシー、クラクション鳴らしながら追いかけて来る。

その時、一根の同僚タクシーに接触、クラクションの他社タクシー停まらない。

同僚タクシーも追いかける。

他社タクシー「停まれ」

同僚タクシー「停まれ」

一根タクシー、2台のタクシーを振り切って走る。

女性客F「うどん食べに行くねん」

一根「よろしいですね。お腹空いてきた」

女性客F「お腹空いてきた?」

一根「お腹空いてきた」

女性客F「お腹空いてきた」

ラクション鳴らして追いかけて来る2台のタクシー。

一根逃げる。

一根「空いてきた」

そこへ、フェラーリ登場。

当たりそうに、フェラーリ猛烈スピードで3台タクシー追い抜く。

一根、急ハンドルで退避する。

一根「フェラーリ来た!」

急ハンドルしたので、女性客Fに謝罪する。

一根「すいません。大丈夫ですか?」

女性客F「大丈夫ですか?やさしいっすねええええええ」

9 谷町筋

辰巳和仁男先代社長と妻樹里と息子大蛇現社長と妻妙子と孫裕一郎が、朴一根タクシーに乗り込んで来る。

一根、車から降りて、ドアサービスする。

車回り一周して運転席に戻る。

一根「社長、ありがとうございます」

辰巳樹里奥様「ご苦労様、自宅お願いね」

一根「はい」

辰巳和仁男先代社長「 知ってる?」

一根「はい、 芦屋でございますね」

先代社長「苦楽園。高速で」

一根「高速でございますね」

先代社長「ナビ入れて」

一根「高速でございますので、できましたらシートベルトの方、よろしくお願いします」

先代社長「そうか」

大蛇息子社長「俺は、閉めてる。お母さん、ここ」

先代社長「どうや。忙しい?」

一根「はい。忙しいです。暇なしで」

先代社長「それは、結構なことやな。忙しい言うてるやないか」

息子社長「何で?コロナで忙しいわけないやろう」

10 高速道路

高速道路ETCへ慎重ゆっくり安全に入って行く。

先代社長「コロナ言うても、やる気や。気持ちで勝たな」

一根「はい」

樹里奥様「お父さん」

息子社長「もういい」

先代社長「妙子さん、これからどうするの?」

助手席で、眠っている裕一郎を抱く妙子。

妙子「はい」

樹里奥様「やめて」

先代社長「何も言ってないじゃないか。任せている。何も言わない。口出し無用。わかっている。ITだろう」

樹里奥様「お父さん。ごめんなさいね。ワンマンだから」

一根「はい」

先代社長「何言ってるんだ」

大声になる。

息子社長「降りようかなあ」

樹里奥様「降りるの?高速道路で降りる所あるのかしら?」

息子社長「あるわけない」

一根「あります」

樹里奥様「どこ?」

一根「芦屋出口」

樹里奥様「何言ってるの?」

先代社長「こりやんいいや」

一根「えっ」

樹里奥様「あなた」

先代社長「ワッハッハッハ」

息子社長「フッフッフ」

樹里奥様「冗談よ。ホッホッホ」

皆、大笑い。

裕一郎「何、おかしいの?」

11 タクシー会社事務所内

夜。パトカーと救急車。

レッカー車に引っくり返って大破したタクシー。

鬼平十郎部長が、事務所内で怒鳴る。

鬼平部長「会社つぶす気か」

警察官。事故起こした運転手。救急隊員。納金する運転手たち。

運転手(N)「人の命より車心配している」

鬼平部長「当たり前や。百遍言うてもわからんやっちゃなあ。口中、手突っ込んで、奥歯ガタガタ言わしたろうか。

脳みそ、ストローで吸うてほしんか。どっちや、言え」

朴一根、仕事終えて、納金に事務所入って来る。

一根「そんなの言えるか」

鬼平部長「誰がしたんや。誰や。どこのどいつや。誰が言うてるんや。おまえか。ドライブレコーダー写ってるんやぞ。真っ直ぐ顔見ろ。人が話している時は、目を見るんや。」

鬼平部長、事故起こしの門月運転手の顔に、自分の顔を寄せる。

鬼平部長「目を見ろ」

門月運転手、目の前の鬼平部長に頭上げる。

鬼平部長「謝れ」

門月運転手「すいません」

鬼平部長「誰が謝れ言うた?」

門月運転手「すいません」

警察官「帰ります」

大場係長「ご苦労様でした」

大場係長と小西主任が、外に出てて見送り一礼する。

鬼平部長「誰が謝れ言うた?」

門月運転手「部長」

鬼平部長「この野郎」

鬼平部長、事務所奥まで走って、木刀取りに行く。

鬼平部長、木刀持って、ストレス発散床を叩く。

ドンドンドンドンドンドン。

事務所から、皆退散する。

現金両替機の音。

鬼平部長と朴一根だけになる。

鬼平部長が、事務所内自動販売機で、缶コーヒー購入。

その横で、朴一根が、現金両替機で、100円玉を10円玉に替える。

小銭箱、一杯10円玉にする。

もう一つ小銭箱、一杯100円玉にする。

もう一つ小銭箱、一杯500円玉にする。

鬼平部長が、右手に缶コーヒー、左手に木刀を持って見ている。

朴一根、小銭箱3箱、重そうに持つ。

鬼平部長「何してるんだ?」

朴一根、笑うだけ。一礼する。

12 大病院廊下

門月運転手と朴一根が、ベンチに座っている。

廊下の向こうから、眼鏡の谷川静雅看護師(45)が、歩いて来る。

朴一根「更年期障害

門月運転手「クビかな」

朴一根「休めば」

門月運転手「何で?休めるか」

朴一根「点数あるの?」

門月運転手「大丈夫」

谷川静雅看護師が、朴一根の前を通る時、朴一根に向かってウインクして、一度スキップダンスする。

朴一根気付かない。

門月運転手、苦笑い。

谷川静雅看護師、廊下を歩いて行く。

13 国道43号線

ドーン大衝突音。

タクシーと自動車衝突。

タクシー民家に突っ込む。

自動車の中で、血だらけになって人が死んでいる。

14 タクシー会社会議室(朝)

会社側と労働組合側とが、団体交渉会議している。

狭い会議室が、人満室。

鬼平部長「今、突っ込んだ隣の家から、苦情電話や。

お宅の、会社のタクシーが、

隣の家に突っ込んで、水道管破裂さしたから、トイレの水が止まってトイレいけない。

便所できないと隣の人から、苦情電話来てる。どうする?

主任に、仕事増やしてどないするんや?賠償金1億円や。

会社潰してしまえよ」

15 鬼平十郎部長の自宅

鬼平部長の妻が、朝料理の支度を終えて、一人テレビを見ている。

帰宅まで食べない。

16 タクシー会社会議室

神山敏夫労働組合組合長が、鬼平部長と顔突き合わせて、怒鳴り合う。

神山組合長「生活かかってるんやぞ」

他の組合員たちも、声合わせる。

鬼平部長「わかってるわ。自分で首締めてどないするねん」

神山組合長「会社潰せるなら潰してみろや」

鬼平部長「潰したる」

神山組合長「潰せ」

鬼平部長「潰したる」

神山組合長「早く、潰せ」

16 神山組合長の自宅

神山組合長の妻と娘二人が、朝食を食べている。

娘「行ってきます」

17 タクシー会社ロッカールーム

朴一根が、大型貯金箱に、1000円札と100円円玉を入れている。

18 タクシー会社会議室前

朴一根が、自転車を押して帰る。

鬼平部長、大場係長と出て来る。

朴一根「失礼します」

鬼平部長、立ち停まる。

鬼平部長「何、考えている?

あいつ」

19 芦屋邸宅

青空。

屋上から、神戸湾が見える。

お手伝いさんが、食事用意している。

辰巳和仁男先代社長と妻樹里が、パンとコーヒーの朝食事。

テレビで、自社のタクシー衝突ニュースしている。

先代社長、テレビに釘付け。

先代社長「電話」

樹里「もう知ってますよ」

20 辰巳大蛇社長高級マンション宅

円形エントランス。

裕一郎「パパ、いってらしゃい」

妙子と裕一郎、手を振る。

社長、急いでタクシーに乗り込む。

自宅内。

誰もいない。

テレビが、タクシー衝突ニュースを伝えている。

妙子と裕一郎が、電子ピアノで、練習曲教本ハノン第一番を連弾する。

21 鬼平部長自宅

鬼平部長「いただきます」

妻「いただきます」

朝食、いっしょに食べる。

22 公園

組合員たちの野球。

神山組合長が、ピッチャー。

神山組合長が、投げる。

二塁盗塁。

キャッチャー、二塁へ投げる。

ライデイング。

審判「セーフ」

23 タクシー会社修理工場

朴一根が、自転車押しながら、大破している衝突事故車を、見る。

一台。

二台。

三台。

修理職員A「これから、タイヤ外そう」

修理職員B「はい」

24 タクシー会社玄関

朴一根、自転車押しながら退社。同僚に手を振る。

入れ替わり、辰巳大蛇社長のタクシーが、入社する。

辰巳社長「部長呼べ。休みか?係長は?」

辰巳社長、事務所に入って、騒然。

係長、主任、職員が、事務所を出たり入ったりする。

朴一根が、事務所内の辰巳社長と職員の慌ただしさを覗く。

知らん降りして、退社。

25 川堤防

青空。

朴一根、自転車押しながら家路へ。

26 100円ショップ

大雨降っている。

同僚運転手「明け番か?」

朴「休憩です」

朴、入れ替わり、100円ショップに入る。

買い物籠を取る。

買うぞ。100円。

ニラ。ししゃも。豚かつ弁当。鯖弁当。海苔弁当。人生は、弁当だ。いつでも弁当。次、カップ麺。カレーヌードル。シーフードヌードル。キムチ。納豆パック。卵パック。ブルーベリーも買おう。ストレス発散だ。買って買って買いまくれ。焼けの安八河童の屁だ。次は、ジュースペットボトル。重い。自転車大変だ。家に近いコンビニで買おう。

コンビニ2軒あるけれど、両方とも行こう。大サービスだ。買うぞ。2980円。

27 コンビニA

大雨降っている。

傘。

自転車に大きな買い物袋の朴一根。

コンビニAに入る。

買い物籠取る。

またも、弁当。ハンバーグ弁当。鯖弁当。同じ弁当買ってます。ニシン弁当。牛乳パック。ヨーグルトパック。炭酸ペットボトル。アイスクリームも買おう。1950円。

お釣りを少なくするのが、買い物プロフェッショナルだ。

女性店員と目が合う。

無視。

60歳独身ですが、左手薬指には、大型リンクを付けています。

結婚カモフラージュ。

28 コンビニB

大雨です。

チョコレート。お菓子パック。卵パック。お好み焼きパック。ピザパック。ビール缶。ワイン。2450円。

買い過ぎだ。

朴、リュックサックの中に入れて、肩にかつぐ。

29 道路

雨。通勤通学歩行者。傘の黄色帽子黄色レインコート小学生の列。

傘にリュックサックに大きなレジ袋の朴が、自転車押す。

30 自宅前

すぐに、自宅に入らない。

自宅前のマンション自動販売機で、栄養ドリンク3本購入。

一本、飲む。

深呼吸する。

31 自宅

朴、ドアに鍵入れて、開けようとする。

ドア内から、先にドア開く。

山九「おはようございます」

ドア閉まる。

ドアのベル音。

ピンポーン。

朴一根、ドア開ける。

朴「ただいま」

金魚に餌与える。

朴「おはようございます」

山九「おはようございます」

徐山子「お帰りなさい」

朴「ただいま」

徐山子「今日も一杯買って来たね」

朴「どうぞ。食べて」

山九「これとこれ。もらっとく」

弁当と炭酸ペットボトル持って行く。

朴「食べて寝てテレビ見て」

49インチテレビ。

山九、もうハンバーグ弁当食べている。

朴「ばあちゃん、食べて」

徐山子「お腹空いていない」

徐山子、買い物袋の弁当取り出して、開ける。

鯖弁当、開けて食べ始める。

山九は、二つ目のニシン弁当を食べている。

山九「いつもいつも、同じ弁当ばかり、買って来なくていい」

食べながら言う。

朴一根「何、食べるんや?」

山九「無駄使いするな。買うな」

朴一根「ばあちゃん、ハサミ」

朴一根、徐山子が開けようとする鯖弁当パックを、ハサミで開けて渡す。

朴一根「食べて寝ろ。テレビ見ろ。俺も食べよ」

三人いっしょに黙って弁当食べている。

台所。ガスコンロ。

鍋が白煙沸騰している。

朴一根、ニラを包丁千切り。

コトコトコトコトコトコトコトコト。

ラーメン入れる。

居間。山九と徐山子が、目を瞑って寝ている。

眠っているのでしょうか?

朴「はい。ラーメンできました」

テーブルに、キムチとラーメン二つ置く。

山九と徐山子、起き出す。

山九「食べよか。胡椒」

朴、胡椒持って来る。

32 洗濯物干し場

空は晴れている。

朴一根が、洗濯物を干している。

おばあちゃんの穴の空いたパンツ干している。

33 階段

朴一根が、階段雑巾掃除して降りて行く。

34 居間

山九と徐山子が、眠っている。

朴一根が、眠っている山九に話しかける。

本当に眠っているのでしょうか?

朴「飯食え」

山九「いらん」

朴「女は?」

山九「いらん」

朴「おっぱい」

山九「いらん」

朴「女」

山九、目を瞑ったまま答えない。

朴「女」

山九、答えず動かない。

朴「女」

山九、答えず動かない。

朴「女」

35 自宅玄関 晴れ

朴一根の徐仁美と朴寛子が、入って来る。

二人「こんにちわ」

36 自宅居間

山九「いらっしゃい」

朴「どうした?」

寛子「どうしたって?お母さんの誕生日」

朴「弁当食べや。小遣いやろ」

朴、台所奥から、缶貯金箱3個持って来る。居間端から、一つ。

二階から二つの缶貯金箱を、持って来る。

新聞紙敷いて、缶貯金箱5個開ける。

仁美「何?これ」

出て来る出て来る。お金。一万円札。千円札。500円玉。100円玉。

徐山子。徐仁美。朴一根。朴寛子。朴山九

5人で、黙って、お金を数える。

熱心。

テレビ音が、大きい。

お札10枚。輪ゴムで束ねる。

寛子「おかしい」

寛子、大声で笑う。

それでも、皆、黙々とお金勘定お札輪ゴム束ねる。

10万円10万円10万円10万円10万円束ねる。

合計95万8千5百3十3円也。

今年一年間朴一根の毎日缶貯金箱合計でした。

朴「人生毎日出勤毎日貯金毎日学習です。はい、ばあちゃん、10万円」

朴が、徐山子に10万円手渡す。

10万円受け取りながら、

徐山子「ちゃんと、袋入れとかな。輪ゴムやろうか」

朴「姉ちゃん。10万円」

仁美「いいの?」

朴「ええ時来たなあ」

仁美「さあ、帰ろう」

37 姉 徐仁美の家

夫と長女と次女と三女が、食事をしている。

テレビ消している。

大きなピアノがある。

38 自宅居間

朴「寛ちゃん。やろう。10万円」

寛子「ええの?」

徐山子「もうとき」

朴、10万円。寛子に手渡す。

寛子「うれしい。ありがとうございます。うれしい。ありがとうございます。うれしい。うれしい。うれしい」

徐山子「やかましい。袋入れ」

39 妹 朴寛子の自宅。

夫が、テレビ見ながら、カップ麺食べている。

40 自宅居間

朴「さんちゃん」

朴が、山九に、10万円手渡す。

山九「ありがとう」

寛子「良かったな」

徐山子「袋入れ」

(O・L)

41 タクシー会社 朝

朝礼場所。

一人目立つ新人がいる。

辰巳蛇蔵。身長190cm金髪で赤いスーツ白い靴。29歳。

蛇蔵、前に出て挨拶する。

蛇蔵「おはようございます。辰巳です。何もわかりませんので、よろしくお願いします」

拍手。

皆、拍手。

小西主任「朴さん。指導お願いします」

朴「私?何ですか?制服は?」

小西主任「新しい制服」

朴「真っ赤」

組合運転手A「会社倒産新人入社」

組合運転手B「不況タクシー会社次から次へ新人入社」

組合運転手C「世の中関係なくタクシー新人」

組合運転手D「 新人支度金10万円1年間退職できません」

組合運転手E「集まれタクシー稼ぐタクシー社長の親戚」

組合運転手F「コロナに負けるなタクシー」

組合運転手g「勝つんだ勝つんだタクシー勝つんだ」

朴「よろしくお願いします」

辰巳蛇蔵「よろしくお願いします」

42 ロッカールーム

誰もいない。

朴の横目。

朴が、缶貯金箱に、1000円札入れる。

辰巳蛇蔵「何してはるんですか?」

朴「見ないでください」

朴、新しい赤い制服に着替える。

43 タクシー会社内

新人研修タクシー。

辰巳蛇蔵運転席。朴一根助手席。

朴「出発進行」

朴、他の運転手に手を振る。

朴「行ってきます」

組合運転手A「行ってらっしゃい。気をつけて」

44 御堂筋

辰巳蛇蔵が、猛スピードで走り抜ける。追い抜け追い越せゴール直前、フェラーリに当たりそうになる。

助手席の朴が、注意する。

朴「もう少し安全運転でお願いします」

元暴走族の辰巳蛇蔵の運転は、荒い。

追い越せ追い抜けゴール。右往左往。豪快運転。

朴「タクシー、安全運転でお願いします」

辰巳蛇蔵フェラーリと競争、当たりそうになる。

45 恵比須町新世界通天閣

辰巳蛇蔵と朴のタクシーが、同僚の小島直美運転手のタクシーを、追い抜く。

朴「一周一周」

辰巳蛇蔵「えええ。Uターン」

朴「ダメダメ。一周一周」

辰巳蛇蔵、アクセル吹かす。

スピード出す。

小島美波運転手のタクシーの後ろ。

辰巳蛇蔵、急ブレーキ着ける。

辰巳、走って、小島美波運転手に質問する。

辰巳「どうしたんですか?」

小島美波、シクシク泣いている。

小島美波タクシーの後部座席に座っているお客様 川尻次郎が、話しかけてくる。

川尻次郎「おいおい、おいおい、おいおい」

辰巳「何や。おいおい」

川尻次郎「おいおい。道、間違えよった」

辰巳「道、間違えたぐらいなんや。おいおい」

川尻次郎「おいおい。プロやろう」

辰巳「おいおい。料金払ったら、早く降りろ。警察呼ぶぞ。お巡りさんさんや。お巡りさん」

辰巳が、通りがかりの警察官を呼ぶ。

警察官B「どうかされたんですか?」

警察官B、自転車降りて来る。

突然、今までタクシー助手席に座って見ていた朴一根登場。

朴「何もないです。ご苦労様です。何もないです」

川尻次郎、料金払う。

朴、ドアを開ける。

朴「ありがとうございました」

川尻次郎、降りて行く。

辰巳「待て」

朴「いい。いい。料金もらった」

朴、小島美波運転手に指示する。

朴「行って。事務所で、休憩して」

小島美波「はい」

小島美波タクシー去る。

46 通天閣下串カツ屋

皆、昼間から酒ビールを飲んでいる。

窓ガラス外側から、朴が、串カツ屋の中を見ている。

食べている子どもたちが、朴の寄せ目しかめっ面を見ている。

辰巳蛇蔵来る。

辰巳蛇蔵「お待たせ」

朴「チェンジ」

フェラーリ通り過ぎる。

47 辰巳蛇蔵の賃貸マンション

テレビで韓国ドラマしている。

妻の三湖と赤ちゃんの修渡が、食事している。

三湖が、スプーンで修渡に、ご飯食べさせる。

48 千日前

朴運転手のタクシーに、辰巳和仁男先代社長と愛人の金百合子が、乗り込んで来る。

辰巳和仁男「ちょうど良かった。待ってたんだよ。新大阪、急いで行ってくれ」

辰巳蛇蔵「おじいちゃん」

辰巳和仁男「何してんだ?」

辰巳蛇蔵「おじいちゃんこそ、何してるんだ」

朴「新幹線でしょうか?」

辰巳和仁男「新幹線。急いで。ばあちゃんには、内緒」

和仁男、唇に人差し指当てる。

愛人の金百合子も唇に人差し指当てる。

朴「急いでられるんですね」

和仁男「急いでる」

蛇蔵「ばあちゃんに言ってやろう」

和仁男「仕事だ。出張だ」

和仁男、財布から、1万円札5枚出して、助手席の蛇蔵に渡す。

朴「急いでられるんですね」

和仁男「急いでる。お願い新幹線」

朴「わかりました」

アクセル全開。

フェラーリ登場。

朴「今は、忙しいです」

飛ばして飛ばして車全部ゴボウ抜き

走って走って走れタクシー。

本領発揮。

辰巳蛇蔵「当たる」

間一髪ハンドル切る。

これぞ、プロドライバーの運転だ。

そこどけそこどけタクシーが通る。

そこどけそこどけタクシーが通る。

飛ばせタクシー。

辰巳和仁男先代社長、目を伏せている。

49 四つ橋線北上

大渋滞。

急カーブ。細い道を北上。

50 中之島

橋越え空飛ぶ。

51 北新地

昼の飲屋街。ぶっ飛ばして行く。

52 新御堂筋北上

淀川越え。

猛スピード。

53 新大阪駅

到着。

金百合子「あああ。目が回る」

辰巳和仁男「やっと、着きましたか。間に合った」

朴「ありがとうございました」

二人降りる。

金百合子「くそタクシー」

金百合子、後部座席ドアを両腕で、力一杯閉める。

ドーン。

朴「あっ」

蛇蔵「あっ」

54 新幹線ホーム

辰巳和仁男と金百合子、階段を上がる。

二人、新幹線に乗って席に着く。

55 百貨店

辰巳和仁男先代社長の妻樹里が、一人、お茶を買っている。

56 百貨店前タクシー乗り場

先代社長の妻樹里が、朴と蛇蔵のタクシーの乗り込む。

走り去る。

樹里の笑い声。

樹里「ほっほっほっほっほ」

57 千里中央桃山台桃ケ池

公園横電話ボックス。

朴が、電話している。

朴「いなくなったんですよ。

ランチ後、帰って来ないんです。はい」

58 千里中央桃山台桃ケ池

休憩。辰巳蛇蔵。煙草。

池のベンチで一人スマホ見ている。

スマホ画面。

視力回復アプリ。

縦横無尽に文字が動いている。

蛇蔵、目を寄せてスマホ画面を見ている。

スマホ、電話掛かって来る。

59 千里中央桃山台桃ケ池

辰巳蛇蔵、タクシー横で、青空見上げている。

朴一根、歩いて来る。

朴「おっす」

辰巳蛇蔵「おっすじゃないですよ。どうして、会社に電話したんですか?」

朴「ごめん。居ないからな」

辰巳蛇蔵「居るじゃないですか?」

朴「年で、見えない」

辰巳蛇蔵「それで、ドライバーよくしてますね」

朴「夜は、もっと見えない。職業病」

辰巳蛇蔵「大丈夫ですか?会社に言おうかな」

朴「大丈夫」

朴一根、鼻に親指当てて大丈夫ポーズする。

朴「大丈夫」

60 住吉大社

ズラリとタクシー並んでいる。

運転手が、集まって話している。

辰巳と朴のタクシーが、来る。

手を振る。

同僚タクシーA「ご苦労様」

(WIPE)

朴のNナレーション。

朴のN「タイヤ掃除のおじさん。会社で、いつも車を洗ってます。家族は、奥さんと独身の娘さん3人暮らし」

会社でタクシーのタイヤ洗うA。

掃除Aの家族。

Aと妻と独身娘が、ビール乾杯。

(WIPE)

喫煙ドライバー。

朴のN「社長の前で、喫煙。

煙草一日20本。家では、ベランダで夕陽見て吸ってます」

(WIPE)

海外旅行趣味ドライバー。ジェット飛行機離陸する。

朴のN「海外旅行ばかり行かれます。家は、散らかってます」

(WIPE)

借金自慢ドライバー

朴のN「電機販売会社で、700百万円の借金があったそうです。大学病院看護師奥さんが、全部支払ったそうです」

学校から帰って来た次男とゲーム好き長男、借金自慢ドライバーが、看護師奥さんの料理を食事する。

(WIPE)

ボルボ通勤ドライバー。

朴のN「何故か会社にボルボ通勤。以前の会社からでしょうか?」

ボルボで通勤入社。

(WIPE)

ゴルフクラブドライバー。

ゴルフ練習場に、タクシー入る。

ゴルフ練習するドライバー。

朴のN「後ろトランクに、いつもドライバー6番アイアンパターを入れています」

ゴルフショップで、7番アイアンを買っているドライバー。

(WIPE)

ラクションドライバー。

横断歩道や交差点を渡る時、必ず、クラクションを

鳴らすドライバー。

朴のN「クラクション鳴らします」

ラクションタクシー停まった時、追跡自動車も停まり、男性が、ドライバーを引きずり出す。

男性「プープープーうるせえ」

(WIPE)

自慢話する高速道路ドライバー。

朴のN「毎日、高速道路で遠方1万円話をします。昨日は神戸。明日は京都。明日はどこへ行くんでしょう。時間給アップ」

(WIPE)

61 朴の自宅

朴のN「貯金が気になるドライバー」

朴が、おばあさんに話している。

横で、朴山九が、昼寝している。

朴「おばあさん。さんちゃん、コンビニ働いて5年や。

1カ月10万円貯金して、1年120万円、5年で600万円。

どこへやった?」

徐山子「聞こえない」

朴「聞こえないって。知っているのは、おばあさんだけや」

徐山子「知らない」

朴「知らないって」

徐山子、真顔で大声で怒り出す。

徐山子「知らん言うたら知らん」

朴、徐山子の怒り方に、声出ない。

徐山子「聞こえない。耳悪い」

徐山子、泣き出す。

朴「知らん言うても、お金知ってるのばあちゃんだけや。600万円」

徐山子の大怒声。

徐山子「知らん。言うたら知らん」

徐山子の鬼顔。

朴一根の呆れ顔。

徐山子「90過ぎてるんやで。耳聞こへん」

徐山子、泣き出す。

朴「知ってるのは」

徐山子、大怒声。

徐山子「知らん。聞こえへん」

徐山子の鬼顔。

朴「いつも、使い走りや」

徐山子、満面の笑み。

山九、昼寝している。

(WIPE)

62 御堂筋

スマートフォンの方位学アプリ。

昼。誰もいない。車も走っていない。暑い。

一台の朴タクシー停まっている。スマートフォンの方位学アプリを見ている。

静寂の中、アメリカ車暴走族グループが、轟音やって来る。

その中の一台アメリカ車が、朴タクシーの前で停まる。

アメリカ車から、辰巳蛇蔵が、降りて来る。

アメリカ車には、妻の三湖と息子の修渡が乗っている。

辰巳「何してはるんですか?

暇でしょう」

朴は、スマーフォンの方位学アプリを見せる。

辰巳「方位学ですか」

朴「今日は、南に行けば、バッチリ金儲けできる」

右手で輪を作る。

アメリカ車から、妻の三湖と息子の修渡が、後向きに手を振る。

朴、輪を作った右手振る。

辰巳「行きます」

朴「じゃね」

(O・L)

車が走っていない6車線道路の御堂筋に、ジェット機が、降りて来る。轟音とタイヤスリップ音。

(O・L)

63 伊丹空港

ジェット機から降りて来た白馬熊男東京大手タクシー会社社長が、辰巳和仁男先代社長が、握手する。

辰巳先代社長、頭下げる。

64 東京スカイツリー

65 白馬タクシー会社

東京スカイツリーが、見える。

白馬タクシー運転手A「社長、大阪タクシー買収に行ったらしい」

66 白馬熊男社長宅マンション

東京タワーが、見える。

母娘食事中。

白馬熊男の娘美紀「パパ、大阪行ってるの?」

妻春子「知らない」

67 白馬タクシー会社

運転手B「嘘つけ。暇つぶしか」

運転手A「買収」

運転手C「会社潰す気か」

運転手D「借金増やすだけ。ええかっこ」

運転手E「払うのはわしら。ははは」

皆笑う。

68 白馬社長宅マンション

美紀「京都行きたい」

春子「金閣寺

美紀「祇園

春子「八坂神社」

美紀「おおきに」

春子「おこしやす」

美紀「お待つとうさん」

春子「こんぴらさん

美紀「コマッタレブー」

二人笑う。

69 ホテル記者会見会場

白馬熊男社長と辰巳大蛇社長が、握手する。

記者の声A「奇々怪々。魑魅魍魎の伏魔殿。おかしな話だ。東京赤字タクシーと大阪赤字タクシーが合併協力。白馬の騎士の白馬タクシーが、大暴走。走る場所を間違えて高速道路走り出した。倒産への第4コーナーへ真っしぐら。リストラしかないのか?」

記者の声B「倒産するわけないだろう。私腹を肥やして、うまくやってるんだよ」

記者の声C「働いている者は、生殺しだ」

記者の声D「働けど働けど良くならない、おいらの生活」

壇上で、白馬熊男と辰巳大蛇が、シャンパンを抜いている。

シャンパン、ポン。

シャンパン、ポン。

お互い開けたシャンパンが、背広に掛かり、頭からシャンパンの注ぎ合いになる。

辰巳大蛇、怒りと笑顔混じる。

白馬熊男、大笑い。

記者の声E「何やってるんだ?」

ホテル職員や記者たちが、白馬熊男と辰巳大蛇の喧嘩ヘッドロックを解き放す。

記者の声F「熊と蛇の戦い。

見ものだね」

70 タクシー会社玄関 夕陽

会社看板変更。

辰巳タクシー株式会社から辰巳白馬タクシー株式会社に。

タクシー運転手たち、見ている。

71 朴一根自宅 朝

出勤。

朴「会社、クビ」

首に手当てる。

徐山子「出勤?」

朴「20年以上働いている。働き過ぎ」

山九「辞めやて」

おばあさんに言う。

徐山子「いってらっしゃい」

朴「辞めさしてもらいます」

山九「バカ親父」

朴「食って寝ろ」

山九「他は?」

朴「年金。どこも雇ってくれません。働き過ぎ」

徐山子「貰えるわけない」

徐山子、笑いながら、足踏み体操する。

山九「どうするの?」

朴「休憩。再婚。世の中、男と女やで」

山九「働かな。あるか」

朴「女。女。女やで。行ってきます」

山九「いってらっしゃい」

徐山子、笑いながら、足踏み体操している。

72 御堂筋淀屋橋

朴タクシー。

朴が、スマートフォンを見ている。

仏滅。 四方八方塞がり。どのアプリを見ても、本日、最悪日。厄日。

どこに行ってもどん詰まり。

朴「帰りたいけど帰れない」

後ろからタクシー追突。

ドン。

朴、バックミラー見る。

追突タクシー運転手「ブレーキとアクセル間違えた」

(WIPE)

73 高速道路

女性客。

朴「関空ですね。ありがとうございます。シートベルトの方、よろしくお願いします」

走る朴タクシー。

トンネル。

橋の上。

海。

工場地帯。

フェラーリが、追い越して行く。

並走する朴タクシー。

74 関西国際空港大橋

フェラーリと並走する朴タクシー。

75 関西国際空港

フェラーリの前に停車している朴タクシー。

朴が、後部トランクからボストンバッグを出して、女性客に手渡す。

朴「ありがとうございました」

朴、一礼する。

大急ぎで、タクシー発進。

朴、急ブレーキ。

タクシーから降りて、後部座席チェック。

朴「お忘れ物なし」

後ろに回ってトランク開ける。

朴「お忘れ物なし」

トランク閉めて、再度、大急ぎで、タクシー発進。

関空の海。

関空ジェット機

(WIPE)

76 浜寺公園駅前 夕方

どしゃぶりの雨。

お地蔵さん。

朴「缶コーヒー飲めば良かった。あかん」

朴、お地蔵さんに、手合わせる。

朴タクシーの右後輪が、田んぼの縁に落ちている。

スマートフォン

朴「関空帰りに浜寺で、田んぼに落ちてしまいました」

雷光る。

(WIPE)

77 浜寺公園駅前 夜

大雨。車のライト。

レッカー車が、田んぼに右後輪を落としている朴タクシーを釣り上げている。

78 国道26号線バイパス

夜。大雨。

レッカー車が、朴タクシーを釣って走る。

79 辰巳白馬タクシー会社前

夜。雨。

朴タクシーを釣ったレッカー車が、入って来る。

主任の声「地下室行って」

80 地下室への階段

暗闇。

朴一根、恐る恐る階段降りる。

滑る。

下層階段まで、引っくり返って落ちる。

81 地下室のドア

恐る恐るドア開く。

地下室内を覗く朴。

82 地下室内

山崎功主任が、机に座って、始末書文言を書いている。

走るボールペンの音。

朴「失礼します」

山崎主任、答えず、始末書文言を書いている。

走るボールペンの音。

朴、立って見ている。

山崎主任、ボールペン置く。

朴に、指合図。座れ。

山崎主任「印鑑、持って来た?」

朴「はい」

山崎主任「ここと、ここと、ここ」

朴、言われたまま、始末書に印鑑押す。

山崎主任、始末書持って、外に出る。

入れ替わり、若い後藤優一主任が、入って来る。

いきなり、後藤主任、机を叩く。

バーン。過去始末書置く。

後藤主任「あなたが、書いた始末書です。何枚あるんですか?信号無視。後方不注意バック事故。ドアポン。お客様に返事しない。何も言わない。フェラーリと競争しているんですか?返事しろよ。何もかもお見通しなんだよ。ここから出さないぞ」

狭い地下室の中で、机を押し付ける。

朴、跳ねのけるが、殴り合いヘッドロック四方固めの応酬となる。

机と電灯が、引っくり返って飛ぶ。

山崎主任、入って来て二人を止めるが、離れない。

二人、力強く四方固めしている。離れない。

83 会社事務所1階 朝

晴れ。

全員起立。朝礼。

辰巳社長「おはようございます」

社員全員「おはようございます」

全員、礼する。

社員全員「ありがとうございます。どちらまででしょうか?どの道で参りましょうか?ありがとうございました。お忘れ物はございませんか?」

小西主任「忘れていました」

84 地下室 朝

朝でも、窓なしで、暗い。

小西主任「おい」

後藤主任と朴一根が、まだ、ヘッドロックして寝転がっている。

大場係長に鬼平部長も登場。

鬼平部長「朴、またおまえか」

後藤主任と朴が、離れて立ち上がる。

85 地下室階段から渡り廊下

地下室から階段を、朴が、上がって来る。

職員が、ブルーシートを持って、事務所内、特に、辰巳大蛇社長から見えないようにしている。

鬼平部長「社長には、内緒や。見せるな」

大場係長「はい」

奥の方から、辰巳社長が、声かける。

辰巳社長「何してんだ」

86 事務所玄関

職員たちが、渡り廊下にブルーシートして、社長から朴を見えないようにしている。

朴、渡り廊下から事務所玄関へ歩く。

87 会社駐車場 朝

朴が、事務所から外へ出る。

組合運転手A「また、おまえか」

組合運転手B「何年タクシー乗っているんだ」

組合運転手C「会社の恥だ。面汚し」

組合運転手D「百遍言ってもわからん奴やなあ」

組合運転手E「新人に教える資格なし」

組合運転手F「いつまでいるつもりや」

組合運転手G「退職願出せ」

朴、非難轟々の中、歩いて行く。

組合運転手H「もう来るな」

組合運転手I「居場所なし」

88 休憩室

朴が、ロッカー開けて、缶貯金箱に、1000円札入れる。

突然、戸締広朗が、来る。

戸締「おはようございます」

朴、缶貯金箱に、1000円札を入れるのを見せる。

朴「貯金は、家の北西に貯金箱置いて、貯金するやで。そうしたら、ザクザク貯まる」

戸締「他の場所は?」

朴「北西から風吹くから。有馬温泉から吹いて来るから」

89 遊園地

戸締と妻美知子と娘美宇が、ジェットコースターに乗っている。

90 戸締のマンション一室

夜。ネオン。

戸締と美知子と美宇が、夕食食べている。

戸締「忙しいかなあ」

美知子「大丈夫」

美宇「大丈夫」

91 会社駐車場 朝

朴が、並んでいるタクシーの間を、自転車押して帰る。

組合運転手たちが、運転席から、叫ぶ。

組合運転手A「裏口から帰れ」

朴、表玄関に向かう。

組合運転手B「社長、行ってらっしゃいませ。ハッハッハ」

皆、高笑い。

組合運転手C「今日もコンビニ弁当か」

皆、大笑い。

組合運転手D「社長」

組合運転手E「お偉い様のお帰りだ」

組合運転手F「出勤だけが、取り柄」

組合運転手G「嫁さん、逃げた」

組合運転手H「事故なし」

組合運転手I「生活、なんとかせえ」

組合運転手J「ボーナスくれ」

92 表玄関事務所前

辰巳大蛇社長が、笑って立っている。

朴、一礼して、自転車押して通る。

組合運転手A「社長」

朴、振り返る。

辰巳大蛇社長と組合運転手Aが、事務所内に入って行く。

ラクション音。

「プー」

朴、再度振り返る。

組合運転手たち、運転席から出て来て、腹かかえて大笑い。

93 朴の自宅前

自転車には、コンビニ弁当箱袋。

朴は、自販機で、缶コーヒーを、飲んでいる。

94 朴の自宅

朴「ただいま」

長女朴和希「おかえり」

朴一根の長女和希が、デジタルピアノを持っている。

朴「来てた?」

朴和希「ピアノ持って帰るわ」

朴「どうしてる?」

朴和希「みんな元気や」

朴和希、グルグル回って、踊りながら話す。

朴和希「まだ?何とかしてよ」

朴一根「まだ?何とかしてよ」

和希、強く言う。

朴和希「まだ?何とかしてよ」

朴一根「まだ?何とかしてよ」

和希、さらに強く言う。

朴和希「まだ?何とかして」

和希、グルグル回って、

鬼しかめっ面になる。

朴一根「まだです」

朴和希「何でですか?」

朴一根「まだです」

朴和希「何年経っているんですか?」

赤鬼和希のしかめっ面。

朴一根「10年」

朴和希「10年ひとむかし。さようなら」

95 コンビニ前 朝

朴が、弁当箱袋を自転車に乗せて、歩いて行く。

96 朴の自宅玄関

女性用自転車。

朴一根「ただいま」

朴水恵「お帰り」

朴一根の次女、水恵が、テレビを見ている。

朴一根「来ていた?」

朴水恵「うん」

朴一根「弁当食べ」

朴水恵「いらん」

朴一根「チョコレート食べ」

朴水恵「いらん」

朴一根「パン食べ」

朴水恵「いらん」

朴一根「お菓子食べ」

朴水恵「いらん」

朴一根「いらん」

朴水恵「いらん」

朴一根「いらんばっかしやな」

朴水恵「作ってる」

97 自宅台所

テーブルの上に、キムチと餃子と肉饅頭とハンバーグステーキとライス。

朴水恵「食べて」

朴一根「一人で作った?」

朴水恵「当たり前。誰が作るん?」

朴一根「やるなあ」

朴水恵「はっはっは」

朴一根「参った」

朴水恵「食べて」

朴一根「はい。小遣いやろ」

財布から一万円札出す。

朴水恵「いらん。お祖父さん、亡くなった」

朴一根「そうか?みんな、泣いていたか?」

朴水恵「うん」

朴一根「何で言わへんの?秘密か?」

朴水恵「知らん」

朴一根、目閉じて、両手合わせる。

朴一根「こっちか」

雷ゴロゴロ鳴る。

朴水恵「帰る」

朴一根「一緒にご飯食べよう」

朴水恵「いい」

朴一根「送る」

朴水恵「いい」

98 線路沿い道路

雷ゴロゴロ。

朴水恵と朴一根が、二人とも、自転車で走って行く。

朴一根、停まって、手振る。

朴水恵も、手を振って、走り去る。

99 朴の自宅前

雷ゴロゴロ。雨。

女性用自転車。

朴一根が、自転車に乗って帰って来る。

100 朴の自宅

朴一根「ただいま」

崔虹子「ハロー」

朴一根「お帰りなさい」

崔虹子「毎度」

吸っていた煙草を、灰皿に押し付け消す。

朴一根「お久しぶりです」

101 自宅居間

元妻の崔虹子が、上半身ブラウスを脱いでブラジャーのまま、朴一根に襲いかかる。

崔虹子「抱いて抱いて抱いて抱いて抱いて抱いて」

朴一根「やめてくれ」

朴、逃げる。

崔虹子、ヘッドロックして放さない。

朴一根「苦しい」

逃げる。

崔虹子、追いかける。

崔虹子「何故逃げるんだ」

狭い家、逃げ場所なし。

朴、風呂場に逃げる。

崔虹子「逃がさんぞ」

102 風呂場

朴が、風呂場のドアを閉めようとする。

崔虹子、足挟む。

風呂場ドアから、顔出す。

崔虹子「背中、流したろ」

崔虹子、風呂場に入って、桶の水かける。

バスタブに追い詰める。

崔虹子「これでもか」

崔虹子、朴の頭毛を引っ張って、バスタブの水中に、朴一根を埋める。

窒息死するぐらい、長く頭押さえる。

朴一根、苦しくなって、頭上げる。

朴一根「苦しい」

崔虹子「まだまだ」

崔虹子、再度後ろから朴の頭押さえて、バスタブに漬ける。

朴一根「苦しい」

朴、頭上げる。

崔虹子「まだまだ」

崔虹子、朴の頭髪引っ張って、再度バスタブに漬ける。

長い時間。

朴一根、もがく。頭上げる。

崔虹子「まだ」

崔虹子、再度、朴の頭を漬ける。

朴一根、もがく頭上げる。

崔虹子「おまえのために、どれだけの人間が苦しんだか、思い知れ」

崔虹子、朴一根の首締める。

朴、振り払って、風呂場から出る。

崔虹子「捕まえ」

長女和希と次女水恵と山九が、朴一根に、襲いかかる。

朴一根、トイレに逃げる。

103 トイレ

崔虹子、和希、水恵、山九が、朴一根の頭を、便器に押し込んで、水流す。

104 玄関

徐山子が、帰って来る。

徐山子「ただいま」

105 居間

徐山子、歩く。

徐山子「がんばっているか?」

106 トイレ前

徐山子、笑いながら、トイレノックする。

徐山子「誰?」

朴「すぐ、出る」

107 御堂筋淀屋橋

朴タクシー、年配の女性客乗車走る。

朴、右手小指に包帯している。

年配女性客「次男の嫁が、怖い。長男の嫁は、優しいんです。次男の嫁が、怖い。逆らう。何を言っても逆らう。反対する。押し付ける。命令してくる。ごり押し。言い訳許さない。弁が立つ。誰も逆らえない。長男に跡継いでもらいたいんだけど」

朴、運転しながら話す。

朴「奥さん、長男さんと次男さんが、居られるんでしょう?」

年配女性客「ええ」

朴「跡を継ぐのは、次男が、跡を継ぐんです。長男は、継がないんです。次男が、跡を継ぐんです」

年配女性客「人の話を聞かないの。今から会うんだけど、

怖い」

朴「跡を継ぐのは、次男だから、次男の嫁を大事にしなくちゃ」

108 百貨店京料理

年配女性客夫婦。長男夫婦と男の子。次男夫婦と男の子と女の子。若い三男。

次男嫁富子演説「お母様は、お姉様といっしょに暮らしてもらいます。よろしいですね。私は、いっしょに暮らすことはできません。お姉様、よろしいですね」

長男嫁「別に」

年配女性客「そうなの?」

109 御堂筋

朴タクシーと年配女性客。

朴「のぞみをかなえるには、

東の方角のチョイ下に行けば、臨みが叶う。そこの方位学の名前が、臨と言って臨みを叶える場所になってます。臨みを叶える。臨の方角」

年配女性客「あ、そう」

朴「そうです」

110 会社点呼場 朝

時計午前8時30分。

タクシー出庫。

朴が、一人タクシーの中で、目に白タオル当てて眠っている。

大場係長「お疲れのようですね」

朴、白タオル取って起き上がる。

朴「小指捻挫しました」

右小指包帯を見せる。

大場係長、名刺見せる。

大場係長「ここの接骨医院、よく治すらしいですよ」

朴「接骨医院ですか?」

大場係長「立派な接骨医院らしいよ」

朴「それじゃ、行ってみます。ありがとうございます」

朴、右小指包帯を、大場係長に見せる。

大場係長、居ない。

朴、名刺見る。

朴「谷川菊江、谷川静雅。

菊と牙」

110 谷川整骨医院医務室 夜

暗い。

谷川菊江老女性医師(76)と谷川静雅看護師(45)が、朴一根に質問する。

谷川菊江医師と谷川静雅看護師二人とも、眼鏡している。

谷川菊江医師「どうしてここに来ましたか?」

朴一根「会社から紹介されました」

谷川菊江医師「それだけで?」

朴一根「 方角からいい方角なんで」

谷川菊江医師「占いで来たわけ」

眼鏡上げる。

朴の右手小指を、ひねり上げる。

朴「痛い」

谷川菊江医師「私ね、バスから降りる時、転けて跳ねられて、首の骨を骨折したの」

朴「首ですか?」

谷川菊江医師「そう。今も首が痛いの。ここ」

くるりと、後ろ背中向いて、後ろ首を出す。

谷川菊江医師「ここ。ちょっと触って」

朴、谷川菊江のうなじを撫でる。

谷川菊江医師「そこそこ。もうちょっと下」

朴、谷川菊江の肩を揉む。

谷川菊江医師「そこそこ」

谷川静雅看護師が、ずっと見ている。

朴、目を瞑って、谷川菊江の肩から腕を揉む。

谷川菊江医師「一人息子いるの。建築の勉強しているの」

朴「お医者さんに成ればいいのに」

谷川菊江医師「医者は嫌だって」

猫「二ヤーン」

目覚めた猫が、歩く。

谷川菊江医師「息子。服脱いで」

谷川菊江医師、服整える。猫を抱いて、廊下に出る。

111 谷川整骨医院廊下

谷川菊江医師、猫に餌やる。

谷川菊江医師、体操しながら、廊下を行ったり来たりする。

112 医務室

医務室から、朴が、谷川菊江医師の体操歩きを見る。

後ろ向きになった所を、朴が、医務室から出て玄関へ行く。

113 谷川整骨医院玄関

朴、急いで靴を履いて、玄関ドアノブに手を置く。

後ろから、谷川菊江医師が、朴の背中に抱きついている。

谷川菊江医師「どこ行くの?」

朴、天井見る。

天井に七福神の鬼絵が、飾ってある。

谷川菊江医師「放さない」

114 医務室

谷川菊江医師「お帰りなさい。脱いで」

朴「小指です」

谷川菊江医師「いいから。シャワー浴びる?」

115 シャワー室

朴が、シャワー浴びている。

ドスン。ドスン。ドスン。ドスン。ドスン。

大きな音。

116 医務室

谷川菊江医師が、大きな木槌を、振り上げ下ろしている。

谷川静雅看護師が、廊下見ながら、ドア閉める。

117 谷川整骨医院廊下

電灯揺れる。

カメラ下がって行く。

朴の声「お助け」

谷川菊江の声「できません」

118 朴の自宅

朴一根の手。

冷蔵庫上の缶貯金箱に、千円札を折り曲げて入れる。

119 朴の自宅前 朝

朴一根「行ってきます」

自転車乗る。

家の中から、朴山九の声。

「行ってらっしゃい」

朴一根、自転車停めて降りる。

後ろ振り返る。

誰もいない。

自転車押して歩く。

後ろ振り返る。

誰もいない。

自転車押して歩く。

後ろ振り返る。

誰もいない。

朴一根、行く。

谷川静雅看護師が、電信柱横から見ている。

120 狭い通勤道路

谷川静雅看護師が、遠くから朴一根の後ろ姿を見る。

猫を抱いている。

右人差し指を曲げる。

遠くを行く朴一根が、停まる。

後ろ振り返る。

誰もいない。

121 タクシー会社

朝礼。点呼。社長挨拶。

朴、社長の話を、皆いっしょに聞いている。

猫を抱いた谷川静雅看護師が、遠くから朴の後ろ姿を見ている。

眼鏡上げる。

朴が、社長の話聞きながら、後ろ振り向くが、谷川静雅看護師いない。

122 御堂筋淀屋橋

朴タクシー停車。

後ろ遠くから、猫を抱いた谷川静雅看護師が、朴タクシーを見ている。

お客様乗り込んで来る。

朴「ありがとうございます」

男性客「なんば」

朴「奈良」

男性客「なんば」

朴、振り向いて、後ろ遠くを見る。

男性客「なんば」

朴、後ろをジロジロ見る。

フェラーリ、走って行く。

朴、行かない。

男性客「運転手さん、出発」

123 中華料理店前

朴タクシー駐車して、中華料理店に入る。

遠くから、谷川静雅看護師が、猫抱いて見ている。

朴、振り向かない。

124 野球公園

朴が、缶コーヒー飲みながら、少年野球を見ている。

後ろから、谷川静雅看護師見ている。

朴、振り向かない。

「ホームラン」

125 伊丹空港

朴が、飛ぶジェット機を見ている。

遠くから、谷川静雅看護師が、朴を見ている。

126 ペットショップ

朴が、金魚や亀を見ている。

後ろから、谷川静雅看護師が、猫だきながら見ている。

朴、無視して、カブト虫見ている。

127 朴の自宅前 朝

朴一根、出勤。

朴「俺は、一生使い走りだ」

自転車に乗る。

谷川静雅鬼看護師登場。

谷川静雅鬼看護師「おはようございます。行ってらっしゃい」

朴「おはようございます」

谷川静雅鬼看護師「気を付けて」

家から、朴山九出て来る。

山九「行ってらっしゃい」

朴一根「行って来ます」

山九「どちら様ですか?」

谷川静雅鬼看護師「おはようございます」

山九「どちら様でしょうか?」

朴一根「信号待ち。してはるから、待ったって」

山九「何が、信号待ちや。会社出勤の邪魔しないでください」

朴一根「鬼が、信号待ちしている」

山九「熊が、信号待ちしてるんだろう」

谷川静雅鬼看護師「おかしい。鬼と熊の信号待ち」

朴一根「する訳ないだろう」

山九「してるんだって」

朴一根「行って来ます」

谷川静雅鬼看護師「行ってらっしゃい」

笑う。

山九「行ってらっしゃい」

笑う。

朴一根「笑うが、鬼」

笑う。

128 淀川豊里大橋駐車場

昼。晴れ。

朴一根、川の流れを見ている。

ポンポン運搬船が、行く。

若い女の声「おっさん、川見とる」

129中央卸売市場 夜明け

マリア・ブロンズ登場。

ねじり鉢巻き姿。

マリア「いらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい」

130 朴タクシー

マリア・ブロンズ乗客。

マリアが、運転している朴一根に、後部座席から質問する。

中央卸売市場に到着。

マリア「あなたは、日本人ですか?」

朴一根「アイアムコリアン」

マリア「あなたは、日本人ですか?」

朴一根「アイアムコリアン」

マリア「日本語で言ってください」

朴一根「日本人じゃない。韓国人です」

マリア「私は、日本生まれのフランス人です」

朴一根「フランス人?」

マリア「そう。フランス」

朴一根、スマートフォンを取り出す。

朴一根「これ知ってますか?」

スマートフォンのスイッチオン。

フランス語のイムジン河の歌が、流れる。

マリア、手を振る。

マリア「がんばって」

朴一根「コマッタレブー」

131 中央卸売市場 朝

マリア・ブロンズが、ねじり鉢巻き姿で、魚を売っている。

マリア「いらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい」

132 神戸六甲アイランド

夕陽。

海。

高層マンション。

133 マリア・ブロンズ自宅

夕陽。

マリアと夫田中肇と娘香萌が、夕食を食べている。

マリア「いただきます」

香萌「いただきます」

田中肇「いただきます」

3人 、食べる。楽しそう。美味しそう。家族団欒。

134 神戸中華街のレストラン

食べられない。

テーブルには、食事一杯。料理一杯。デザート一杯。

山九と金順子の結婚式打ち合わせ。

朴一根、朴山九と、金順子、父金和男、母李鳳淑。

朴一根「結婚式は、西宮神社でお願いしたいんですが、

その前に、こちら、山九の履歴書です。順子さんの履歴書は、持って来られましたでしょうか?」

金順子「はい、こちら」

母李鳳淑「ちょっと。ちょっと待ってください。二人が、好きになって結婚式を挙げるんですから、履歴書持って来なさいは、おかしいでしょう」

朴一根「その通りです。形式です。深い意味ないです。

ただ、知り合いの女性で、お見合いして、結婚しました。

旦那さん、働きません。借金だらけで、金貸してくれ。

逃げたら殺す。言われて、今、男の面倒見て働いています。そうなったらどうします」

母李鳳淑「そうなったらどうしますって、そっくりお言葉お返しします。何をおっしゃってるんですか?」

父金和男「ちょっと、待って」

朴一根「私らは、タクシー運転手。息子は、コンビニ店員。労働者なんです。労働者は、履歴書を書かなくちゃいけないんです。商売人じゃないんです」

母李鳳淑「承知の助です。もちろん。当たり前。決まりきったことでしょう。あなた、お父さんでしょう。父親なら、父親らしくしなさい」

朴一根「嫁さん、逃げました。この席で、言う必要ないでしょう」

母李鳳淑「何という親や」

李鳳淑、テーブル蹴る。

135 マリア・ブロンズのレストラン

マリア・ブロンズが、ワインを持って来る。

ワインを、空グラスの山に注いで行く。

朴一根、朴山九と金順子、金和男、李鳳淑が、

ワイングラスを持って、乾杯する。

136 西宮神社結婚式場 朝

夜明け。

朴一根は、一生、使い走りだ。

皆が、食事宴会しても、一緒に食べることはない。

結婚式に、チョゴリ姿も、最近、見ません。

ほどほどに、出しておこうチョゴリ姿。

TV韓流ドラマでも、現代版は、チョゴリ姿ゼロです。

歴史ドラマだけです。

登場人物全員、結婚式に、登場してもらいましょう。

全員、鬼家族ですから。

タクシー会社社長から社員、ドライバー、お客様全員、コンビニの店員さん、フェラーリのお兄さん、ご家族の皆さん。

登場人物、少ない映画です。

家族食事ショット数、15ショットです。

映画ギネスブックに、記録されるでしょう。

死体演技は、皆さん、お得意ですが、食べ方の得意な俳優さんは、少ないです。

ジャン・ギャバン

映画は、食事しよう。

食事の前に写真撮りましょう。

登場人物全員。

階段に並ぶ。

大臣就任写真みたい。

「はい、チーズ」

朴一根「バター」

大笑い。

再度、並んでください。

「はい、チーズ」

パチリ。

137 ポートアイランド ホテル宴会場

鬼の宴会。

飲もう。食べよう。

「Isn't she lovely?」

戦争を知らない子どもたち

「トラジ」

歌おう。 踊ろう。宴会場を走ろう。

野球しよう。サッカー・リフティングしよう。

キック。ゴール。

朴一根「運転あるんで、飲めません」

鬼たち、正体現す。

実は、鬼たち、帰る所がありません。

鬼たち椅子取りゲーム。

朴一根「皆さん、ご祝儀、お願いします」

鬼「忘れてきました」

鬼たち、一人、二人と、手を振って、一礼して、宴会場を去って行く。

138 朴タクシー内 昼

朴一根運転手、後部座席に、金順子と李山九乗っている。

朴一根「結婚式出席したから、金くれって言って来なかったか」

山九「誰が?」

朴一根「鬼」

山九「言って来るか」

朴一根「東南に、金魚。身代わりに死んでくれる。北西に缶貯金箱。毎日、貯金しいや」

山九「鬼に金棒やな」

朴一根「これは、まいった。はっはっは」

三人、大笑い。

朴一根、後ろの金順子に、缶貯金箱を手渡す。

朴一根「家は、暗い方が金貯まる」

山九「金の話ばっかしやな」

朴一根「出勤貯金学習。これが、基本や。最新パソコンあげる。学習してね。AI将棋入ってる」

後部座席の朴山九にノートパソコン渡す。

急ブレーキ。車停まる。

139 横断歩道

朴タクシー、停まる。

サングラス黒装束鬼女性が、ボンネットを、押さえている。

犬を連れた鬼たちが、道路を横断する。

結婚式参加の鬼たちだ。

140 堤防 昼

晴れ上がった青空。

川辺り堤防。風吹く。

結婚式参加の鬼たちが、足早く歩く。

140 堤防2 昼

晴れ上がった青空。

川辺り堤防。風吹く。

結婚式参加の鬼たちが、ゆっくり歩いて行く。

141 堤防3 昼

晴れ上がった青空。

川辺り堤防。風吹く。

結婚式参加の鬼たちが、足早く歩く。

142 堤防4 昼

晴れ上がった青空。

川辺り堤防。風吹く。

結婚式参加の鬼たちが、ゆっくり歩いて行く。

143 東京 夜

朴タクシー走る。

銀座赤坂六本木。

新宿渋谷池袋。

青山原宿表参道。

銀座並木通り

タクシーだらけ。

朴タクシー走る。

終わり

この作品は、フィクションです。

実在の人物・団体・事件などとは、

いっさい関係ありません。