14 山の湯

14 漫才人情長屋風呂屋山の湯(夜・外は台風)

風呂屋の湯船舞台の上で、香織(32)が、香奈(6)を背負い光男(8)の手を握り、李相三(31)と夫婦漫才している。

夫婦漫才というより香織の一人漫才みたいになっている。

観客は、人情長屋に住む一流の漫才師たち芸人たち。

人生幸朗、お浜こ浜、横山ホットブラザーズ、一輪車の一点さん、三味線漫才、フラワーショーなど。

香織だけ一人頑張る。

香織「秋田先生のお題頂きまして、戦争中の親子丼の話です。あんた、ちょっとはやる気出しいな。諸先生方ご所見頂いているんやから。なに?漫才よりたこ焼き焼いている方がましや。そりゃそや。子ども二人。三人目もできてんのに」

李「ほんまかい、三人目」

香織、お腹ポンとたたく。

香織「はいな。任して」

客席から「おめでとう」の声。

香織「ありがとうございます」

客席から「ほんまかい?」

香織「いや本当」

李「覚えないで」

香織「なに言うてんのん。あんた。夜毎、愛してる。ダーリン。愛してる。世界中一番愛してる。ダーリン。」

李「(低音で)愛してる」

香織「これで騙された。ええかげんにしいや。変な声出して。何人の女騙したんや」

李「(低音で)愛してる」

香織「もうええちゅうねん」

李「(低音で)愛してる」

香織「戦争中の親子丼の話やろ」

李「(低音で)親子丼」

香織「そう来たら、(高音で)どうも。夜のヒッパレードのお時間です。なんで、親子丼と夜のヒッパレードやねん」

香織、手つないでいる光男に顔近づける。

香織「なに?光男ちゃん、お腹空いた?」

客席から、男性が、ビスケットを光男に手渡す。

香織「ありがとうございます。(李に向かって)あんたもあいさつしい。ありがとうございます」

李「(低音で)ありがとうございます」

香織「もうええわ