28 台所 深夜
貴志が、カップ麺を食べている。
テーブル上の3階建て建築設計図面。
猫の泣き声。
1階2階3階の設計図面は、3階とも長方形に書かれている。
清が、赤ペンで、建築外壁に沿ってなぞる。
1階図の西側に、出っ張り部屋長方形を書き加える。
2階図の西側にも、出っ張り部屋長方形を書き加える。
3階図の西側にも、出っ張り部屋長方形「ベランダ」と書く。
貴志「建設会社行ったんや。2000万円では無理です。3階建ては。解体もあるし。
最低でも2500万円2600万円は、かかるって」
清「明日、来るらしいなあ」
貴志「会って話聞いてみ」
清、図面に書いた赤枠を、再度なぞる。
清「問題は、ここやねん。この出っ張り部屋。
これが、大事や」
貴志「だれが言うた?」
清「常識やで。西に出っ張り部屋。お金に困らない」
貴志「世界中に言え」
清、空になった2L炭酸ジュースペットボトルを持ち上げる。
清「カラッポ」
貴志「ダメおやじ」
清「カラッポ」
貴志「ダメおやじ」
清「カラッポ」
貴志「ダメおやじ」
竜子、登場。
竜子「お帰り」
清「貴志の通帳預かってるやろ」
竜子「90過ぎて、耳聞こえない」
清「 コンビニ5年で、月5万、年60万、300万円は、通帳入ってる。どこ?」
竜子「90過ぎて、あちこち痛い、歩かれへん」
清「知ってるのは、ばあちゃんだけ、他いない」
竜子「耳聞こえない」
清「通帳?」
突然、竜子、真顔になって怒鳴り散らす。
竜子「知らん言うたら知らん言うてるやろ」
清「えっ。なんだって?」
竜子「知らん。耳聞こへんねん。歳や。よううう生きてきた」
貴志、スマホ見ながら、パン食べている。
清、呆れ顔。
白猫が、シッポ立てて歩く。
猫の泣き声「ニャーン」