14 関空に行く
「はい、関空ですね。ありがとうございます」
爆音。赤いフェラーリ。
また、来た。追い抜かれました。
高速道路入口。
もしかして、君も関空。
負けません。
高速道路入口ETC。
待て待て待て待て待て。真赤なフェラーリ。
関空まで1時間。お客様韓国女性とお子様男の子と女の子合計3名。お住まいは、ソウル特別市。清凉里駅近辺。
大学付属幼稚園。小学校に上がって家庭教師付きます。
関空まで、お母様、眠らないみたいです。
安全運転で行きます。
安全快適迅速。最後、お子様同乗ですので、降りてドアサービスです。
フェラーリ、遥か遠く走ってます。
私らは、タクシーであって、ハイヤーです。
タクシー業務は、乗車拒否飲酒運転暴力行為喫煙行為チケット不正できません。プロならば、外に出てドアサービスです。
ただ、老骨に鞭打って運転業務していますので、お客様の乗り降りのスピードに遅れます。
「嫌なのか」
「行くのが嫌なのか」
「好きやったら好き、嫌やったら、嫌。はっきりせえや」
「楽しく生きろや」
私たちは、保守的です。変化を好みません。退屈な人間です。自分では何もしません。
野球ゴルフ何しても、人に迷惑かけて怪我ばかり中途半端で長続きしません。
会社出勤、普通に楽しんでます。
運転席とお客様後部座席とは、断崖絶壁別世界です。
違う惑星の人間が、前後ろ小さなタクシーに乗っている感じです。
プロなのかプロでないのか、後ろから見られています。恐竜の目のように、ギラギラ見られています。
「あなた、プロですか?」
そこに、辿り着きます。
「あなた、プロですか?」
答えます。プロです。
「あなたは、どうしてプロなんですか?」
答えは、最後なんです。
身体障害者、子ども連れ、妊婦、ご老婦人。
最後、運転席から降りてドアサービスします。自動開閉ドアありますが、降りてドアサービスです。
忘れないように、
ドアサービス
ドアサービス
ドアサービス
念じてます。
クレームも多く経験しています。自己保身のためです。
海。
関空です。
来ました。
真赤なフェラーリは、どこに行ったかわかりませんが、安全運転です。
タクシー降り場、着きました。誰もいません。
降りてドアサービスします。