18 マドンナ看護婦に勝つ Part2

18 マドンナ看護師に勝つ Part2

ちゃらちゃらしない。

何一つしゃべらない谷沢静雅に、私は、結婚してくれと

言いました。

「本当ですか?」

言えるわけないでしょう。

「ぼくと付き合ってくれませんか?」

「言ったの?」

「おはようございますだけ」

「何それ?」

「精一杯です」

「ガーンと行け」

「貧しいから、精一杯愛する気持ちだけです」

「言ったんか」

「言えないなあ」

「一杯飲めよ」

「心から君を愛してます」

「言ってないんだろう」

「うるせえなあ」

「良かったじゃねえか」

「何がいいんだよ?」

パワハラセクハラアカハラ

「何?アカハラって」

「アカデミーハラスメント。大学の先生が、学生いじめ」

「病院でもあるかなあ。タクシー会社じゃ、ハラスメントだらけだ」

「大丈夫。谷沢静雅ちゃん。シズカはシズカでも、

牙のついた静雅だろう」

「何が、ちゃんだろうだ。バカ野郎」

「いいとしこいて若い女の尻追い回すなって」

「俺には、再婚無理だな」

「最初からわかってるじゃん。女心が、わかんねえ」

「それで」

「集中心がねえ」

「それで」

「数打ちゃいいってものじゃない」

「それで」

「クレイジーラブだよ」

「なんだよ?」

「人生一人」

「相手一人か」

「相手が一人。それで、終わり」

「終わったか」

退院。

誰もいない。

迎えにも見送りにも誰もいない。

これだけ、人に嫌われると、こちらも人が見えない。

走っている自動車だけ見える。

なぜ、人いないんだろう。

誰か出てくるんだろうか。

勘弁。

いい年して抵抗できません。

退院です。みんな忘れたい。

菊江と静雅。

あの女二人は、何だったんろう。

薄々感じていたんですが、

たまたま、夜タクシーのお客様が、その菊江さんの家の隣近所の方でした。

売り上げは、悪い。体は、調子悪い。苦情事故文句ばかり。

たまったものじゃない。

菊江おばあさんとは、会わないようにしたんです。

夜。

菊江おばあさんの近くに来て、

「ありがとうございました。さようなら」