15 浜子浜美漫才

15 人情長屋演芸場(昼・晴れ)

浜子浜美の漫才

浜子肥満。

浜美長身細身。

浜美「アホでーーーす」

浜子「そんなん自慢せんでもええやんか」

浜美「自慢違うやん。自己紹介やん」

浜子「戦争中に親子丼つくれって言われた。命令や」

浜美「それは、作らなあかん」

浜子「どうやって作るねん?戦争中やで。何もあるかいな」

浜美「リンゴ入れたらいいねん」

浜子「親子丼は、かしわ。鶏肉や。誰がリンゴ入れるねん」

浜美「戦争中だから、リンゴの親子丼おいしいでえ」

浜子「みかんするか」

浜美「ええなあ」

浜子「よく言うわ」

浜美「親子で食べる親子丼やろ。親子で食べたら何でもええわけや」

浜子「戦争中で、親子で食べられへんから、なあ、今どうしてるんかなあと思いながら食べるんやないか」

浜美「そうやなあ。涙出てくるなあ」

浜子「どこから?」

浜美「よく言うなあ」

浜子「おしん見てた時、一人でたこ焼き食べてたやないか。みんな泣いて見てるのに。私の分まで食べてたな。返して」

浜子、手の平を出す。

浜美「あるかいな」

浜美が、浜子の手の平を叩く。

浜子「痛たたい。えらい力やなあ」

浜美「そりゃ、四食食べてるもん」

浜子「四食?戦争中やで。三食でも大変やのに」

浜美「戦争中やから食べなあかんねん。勝たなあかん」

浜子「四食?どこ入った?」

浜美、浜子の帯び腹叩く。

ポン。

浜子「えらい力や。食べ過ぎ違う」

観客、笑い声。

浜美「(観客に向かって)何おかしいねん」

浜子「お客さんに、当たってどないすんねん?笑いに来てはんのに」

浜美「笑い声聞くと、腹立つねん」

浜子「待ちな。今、聞きました?お客さんの笑い声が腹立つんやて。こんな漫才師いてます?」

浜美「ムカムカする」

浜子「お客さんの笑い声。わかった。それで、四食食べてるんや。ストレス発散。食べ過ぎ違う?」

浜美「また、笑った」

浜子「誰でも笑うわ。一週間に一辺しか食べてないガリやんか」

浜美「あんた、一日何食や?」

浜子「私、四食や。朝昼晩寝る前。あんたといっしょやんか。いつもいっしょに食べてる」

浜美「食べ過ぎやろ」