前半と目次

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目次

映画「1000万円台の3階建て二世帯住宅が建つ」のツッコミシナリオです。

刑務所仲間から「家を建てるなら西側に出っ張り部屋を作れば、金に困らない」と教えられたマザコンな男が、

出所後、95歳の母親からヘソクリ2000万円を渡され家の新築を任される。最初から2000万円では解体や消費税を見積もっても資金不足で無理な話なのだが、建築会社の美貌女性営業社員に翻弄され、3000万円の契約をしてしまい、前金を払ってしまう。

困った男は、

親からも建築会社からも逃げるが、一転、

建築会社女性社長のご好意により、住宅ローンを組んで

新築することになる。

しかし、住宅ローンの返済が不可能と考えた

母親と男は、宝石泥棒の計画を立て実行して完全犯罪を成功させる物語

登場人物

松高 清(65)

松高 竜子(95)

松高 貴志(32)

大滝妙子(45)

田嶋理江子(62)

風水受刑者

受刑者A

受刑者B

受刑者C

受刑者D

受刑者E

スナックのママ

スナックの女A

スナックの女B

スナックの女C

スナックの女D

スナックの女E

男子小学生A

男子小学生B

男子小学生C

男子小学生D

男子小学生E

女子小学生A

女子小学生B

女子小学生C

女子小学生D

女子小学生E

ビルの管理人

法務局の受付男性

法務局の受付女性

映画空間ツッコミシナリオ「1000万円台の3階建て二世帯新築注文住宅が建つ」

1 刑務所 昼

青空の下。

多くの受刑者が、歩いている。

2 刑務所広場 昼

受刑者たちが、整列している。

刑務官「番号」

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20」

3 刑務所広場 昼

受刑者たちが、ラジオ体操している。

4 刑務所トイレ 昼

ドーン。トイレが揺れる。

受刑者A「なんや?」

受刑者B「隣で高級マンション建てている」

受刑者A「億ションか?」

受刑者C「上から監視や」

5 刑務所食堂 昼

受刑者A「帰るらしいな」

受刑者B「だれ?」

受刑者A「あいつや」

受刑者C「帰る家がある奴はいいなあ」

松本清、食事している。

6 刑務所作業場 昼

松本、3階建て建築木工ミニチュアを、作っている。

7 刑務所寝所 夜

暗闇。

松本、寝ながら、天井見ている。

8 刑務所作業場 昼

松本、3階建て建築木工ミニチュアを、右手でつかみ叩きつぶす。

9 メタバース(仮想空間)内 刑務所広場 昼

風水受刑者が、地面に絵を書きながら、松本に話す。

風水受刑者「こっちが、北。南。東。西。普通の家は、正方形か長方形や。

どうして、貧乏人ばっかしか。それは、正方形や長方形の家に住んでいるからや。

アパートでも、正方形か長方形や。

住宅ローンで、一生終わりや。

公務員でも一流企業でも一緒。芸能人でも、

家一軒残ったらええとこや。それだけ、税金が厳しいんや。

家三代で相続税払えない。

働いてもいっしょや。そしたら、どうしたええねん。

これ見てみ。正方形長方形を足してやったらええねん。

西に黄色って言われるやろ。

もっと確実にするために、西に小さな出っ張り部屋を作ってやったらええねん。

ここに勝手口。

人間の鼻や。 団子鼻や。家に団子鼻の部屋を付けたらええねん。

そしたら、一生金に困らない」

突然、受刑者Dの靴が、風水受刑者の出っ張り部屋の地面図形を消す。

受刑者D「だれが信じるか?嘘ばっかしか言うな。ペッペッペテン。。そんなんで、金持ちなったら、

刑務所いるか。 なんでおまえここに入ってるねん。コッコッコッペパンにしてしまうぞ。

フッフッフンダリケッタリや」

受刑者Eも一緒に地面図形を足で消して飛び跳ね踏んづける。

10 刑務所 広場 昼

受刑者Fたちが、松本に顔を近づける。

受刑者F「銀行強盗が一番や」

受刑者E「出所か」

受刑者D「一緒にやろう」

受刑者F「新宿で会おう」

受刑者E「トー横」

受刑者D「待ってるからな」

11 メタバース

新築3階建てが、沈んでいく。

消える。

12 刑務所 玄関門 朝 晴れ

玄関門開く。

太陽を背に、松本出所する。

刑務官「お迎えなし」

13 バス停留所前 昼 晴れ

畑横のバス停。

バスが、来て、学生、女子学生、老婦人が、乗り込む。

横を歩いていた松本は、バスに乗らない。

14 道路

バスが、歩いている松本を追い越して行く。

15 スカイツリー展望台 昼 晴れ

松本が、東京の空を見る。

メタバース(仮想空間)に変わる東京の空。

16 渋谷ハチ公前 昼 晴れ

松本が、ハチ公前交差点を渡る。

メタバース内のハチ公前交差点を、松本が渡る。

17 新宿トー横前 夜

松本が、歩く。

メタバース内のトー横を、松本歩く。

18 タクシー内 夜

松本が、後部座席に座っている。

タクシーの後ろの景色が、メタバースに変わって行く。

19 多摩川大橋 夜

松本、橋の上から夜の川を見ている。

メタバース内の多摩川が、彩られて変わって行く。

20 松本竜子の家の前 深夜

松本竜子の家。

松本の指が、壁のインターホンを押す。

「ピンポーン」

家の前のスナックの扉が開いて、女の声。

スナック女A「ありがとうございました」

スナック女B「ありがとうねえ」

松本、インターホンを押す。

「ピンポーン」

スナック女C「ありがとうございました」

家の前が、スナック客5人とスナック女5人で、ごった返す。

スナック女D「わすれもの。わすれもの。わすれもの」

スナック女E「またねえ」

松本、インターホンを押す。

「ピンポーン」

反応なし。スナック女たちの笑い声。

スナック女A「ありがとうございました」

女たち、客に手を振っている。

客去り、女たちもスナック店に入ってドア閉める。

松本、インターホンを押す。

「ピンポーン」

松本、ドアの把手を引こうとする。

家の中から、ドア開く。

「だれ?」

95歳の松本竜子が、眠そうにしながら開ける。

竜子「遅いなあ」

松本、家の中に入る。

竜子「お帰りなさい。疲れたやろ」

松本が、家の中に入ろうとすると、

スナック女A「こんばんわ」

松本、首だけ振り向く。

スナック女A「いつもご迷惑かけていますので、

どうぞ」

スナック女Aが、赤ワイン1本差し出す。

松本「えっ!なんだって?」

松本、愛想なく赤ワインを受けとって頭下げる。

家に入ってドア閉め鍵かける。

21 スナック店内 深夜

スナック女A「えっ!なんだって?ワイン出したんや。

いつもお世話になってます言うて。

そしたら、えっ!なんだって?

だって。それだけ。

それはないやろう。

どうもありがとうとか、

これからもよろしくとか、

愛想ある言葉あるやろう。

えっ!なんだって?だけ。

そのまま、家入って行った」

スナック女B「いつ?」

スナック女A「今」

スナック女C「どこで?」

スナック女A「前で」

スナック女D「だれが?」

スナック女A「前のおっちゃん」

スナック女E「息子とおばあさんだけやろ」

スナック女F「帰って来た」

スナック女A「どっから?」

スナック女B「刑務所」

スナック女A「えええ、こわ」

スナック女C「なにした?」

スナック女D「スリ」

スナック女E「泥棒」

スナック女F「銀行強盗」

スナック女G「人殺し」

スナック女A「何人殺した?」

スナック女B「3人」

スナック女A「そのうち、ばあさん息子も殺しよるぞ」

スナック女全員で、

「おうこわ」

(WIPE)

22 松本竜子の家の風呂場 深夜

裸の清が、湯船に入って天井見ている。

天井が、湾曲してギーギー鳴る。

雨雫が落ちる。

壁タイルが、剥がれている。

23 居間 深夜

竜子「乾杯。お帰りなさい。ごめんね」

清「乾杯。ただいま」

スナック店からもらった赤ワインを飲み干す。

清「貴志は?」

竜子「仕事。食べて。疲れたやろ」

清「話あるねん」

竜子「わたしもあるねん。先言わせてや」

清「なに」

竜子、2000万円の札束をお膳に置く。

清、指差しながら、

「俺の貯金やないか」

竜子「なに言うてんねん」

清「また、隠してたな」

竜子「90のおばあさんやで」

清「93歳」

竜子「数えな」

清と竜子、札束を数え直す。

清「なにするねん」

清、札束開く。

竜子「家、立て直すんや」

清「ここ?」

竜子「ボロボロやろ」

清「50年」

竜子「よう住んだ」

清「足りるか」

竜子「明日来る」

清「だれ」

竜子「建設会社」

清「えっ!何時?」

竜子「1時」

清「タクシーの面接や」

竜子「そうか」

清「2000万円あった」

清、札束を輪ゴムで巻く。

竜子「頼むで」

清「なんでやねん。いつでも俺や」

竜子「男やろ。わたしが、男やったら総理大臣なってたで」

清「眠い」

竜子「人間、よく寝なあかん。2階上がって寝」

清「天井抜けへんか」

清、天井見上げる。

竜子「まだ、大丈夫や」

清「築50年」

竜子「おやすみ」

24 清の夢 朝 晴れ

新築になった家。

清、竜子、貴志が、玄関前に立って家を見上げる。

三人の後ろには、スナック女たちや小学生たち、隣人おばちゃんおっちゃんたちが、見ている。

貴志が、リモコンキーで、玄関施錠解除する。

全員、歓声とともに新築家に入って行く。

貴志が、案内する。

貴志「東南に金魚プクプク。後ろに小さな窓を付けました。玄関に鏡付いてます。(靴を脱ぎながら)こちら床から段差21センチになってます。低めです。手摺り付いてます。

(八畳間へ扉ガラス)ギラギラのチェッカーガラスになってます。敷地11坪しかないのに、八畳和室があります。西壁には窓なしです。こちら、西側の出っ張り部屋です。冷蔵庫、ガスコンロ、流し台にシャワー水栓。3階建て二世帯住宅です。(階段の段差)こちらも高さ21センチ3階まで統一です。手摺りを使わなくても登りやすいです。二階ハイドアです。システムキッチンです。80センチの低めにしています。頭ぶつけるのでクッションを両面テープで付けてます。

部屋からトイレが見えないようにオプションで壁付けてます。

(3階ベランダのシャッター上に開ける)ゲリラ豪雨対策として、サッシの高さを普通20センチを30センチにしています」

子どもたち、ベランダに出て、青空景色見る。

子どもたち「すごい」

25 二階の清の部屋 深夜

暗闇。

眠っている清が、目を覚ます。

竜子の泣き声が、聞こえる。

26 階段

清が、竜子の泣き声を聞きながら、

階段降りる。

27 一階の居間 深夜

暗闇の中、竜子が、寝ながら声を出して泣いている。

玄関を開けて貴志が、入って来る。

貴志が、清を見て言う。

貴志「ただいま。お帰り。ええ歳こいて親泣かすなよ」

28 台所 深夜

貴志が、カップ麺を食べている。

テーブル上の3階建て建築設計図面。

猫の泣き声。

1階2階3階の設計図面は、3階とも長方形に書かれている。

清が、赤ペンで、建築外壁に沿ってなぞる。

1階図の西側に、出っ張り部屋長方形を書き加える。

2階図の西側にも、出っ張り部屋長方形を書き加える。

3階図の西側にも、出っ張り部屋長方形「ベランダ」と書く。

貴志「建設会社行ったんや。2000万円では無理です。3階建ては。解体もあるし。

最低でも2500万円2600万円は、かかるって」

清「明日、来るらしいなあ」

貴志「会って話聞いてみ」

清、図面に書いた赤枠を、再度なぞる。

清「問題は、ここやねん。この出っ張り部屋。

これが、大事や」

貴志「だれが言うた?」

清「常識やで。西に出っ張り部屋。お金に困らない」

貴志「世界中に言え」

清、空になった2L炭酸ジュースペットボトルを持ち上げる。

清「カラッポ」

貴志「ダメおやじ」

清「カラッポ」

貴志「ダメおやじ」

清「カラッポ」

貴志「ダメおやじ」

竜子、登場。

竜子「お帰り」

清「貴志の通帳預かってるやろ」

竜子「90過ぎて、耳聞こえない」

清「 コンビニ5年で、月5万、年60万、300万円は、通帳入ってる。どこ?」

竜子「90過ぎて、あちこち痛い、歩かれへん」

清「知ってるのは、ばあちゃんだけ、他いない」

竜子「耳聞こえない」

清「通帳?」

突然、竜子、真顔になって怒鳴り散らす。

竜子「知らん言うたら知らん言うてるやろ」

清「えっ。なんだって?」

竜子「知らん。耳聞こへんねん。歳や。よううう生きてきた」

貴志、スマホ見ながら、パン食べている。

清、呆れ顔。

白猫が、シッポ立てて歩く。

猫の泣き声「ニャーン」

清「あれっ?」

清、テーブルの上下、探す。

清「チョコレート知らん?」

貴志「ばあちゃん」

29 居間 深夜

竜子が、布団で寝ている。

引き戸が、少し開く。

清「一人で食べて美味しいなあ」

29 居間 深夜

竜子が、布団で寝ている。

引き戸が、少し開く。

清「一人で食べて美味しいなあ」

竜子、笑っている。

30 メタバース内 竜子の夢

2階建て新築上棟式

A棟。

外枠柱が、立つ。屋根が取り付けられる。外壁が貼られる。

次に、B棟。C棟。D棟。E棟。F棟。G棟。H棟。I棟と、建てられていく。

高層マンションビル。

鉄骨が組み建てられ、

次々と、高層マンションビルが、建ち並ぶ。

高層マンション最上階。

寝室ベットの竜子が、目を覚ます。

スカイツリー

太陽に向かって、タイツ姿でエアロビクスしている。

オートバイ爆音。

(WIPE)

31 大時計台 晴れ

クレジット「第一回目」

ハーレーダビットソン爆音。

時計の針が、12時50分を指している。

大滝妙子N「解体入れて3階建て安くて2600万円。今回、2000万円元金だけ。

意地でも息子に色仕掛けローン組ませてやる」

32 大通リA 晴れ

ハーレーダビットソン運転の大滝妙子(33)が、爆音なびかせる。

妙子N「若いからローン1000万円にしよう。ノルマ達成」

33 大通りB 晴れ

ハーレーダビットソンが、走る。

妙子N「あの交差点に、新しいカフェ」

34 大通りC 晴れ

ハーレーダビットソンが、走る。

妙子N「あそこは、ラーメン美味しい」

35 大通りD 晴れ

ハーレーダビットソンが、走る。

妙子N「ステーキ、ジュージュージューシー」

36 海岸沿い 晴れ

ハーレーダビットソンが、走る。

妙子N「海は広いな大きいな」

37 空港沿い 晴れ

飛行機見ながら、ハーレーダビットソンが、走る。

妙子N「来年は、ニューヨーク」

38 大橋 晴れ

ハーレーダビットソンが、橋上走る。

妙子N「鯉釣って、みんな恋してる」

39 下町狭小道路 晴れ

ハーレーダビットソン、四角曲がる。

妙子N「ここ、ここ」

40 路地道

ハーレーダビットソン、突き抜ける。

41 竜子の家の前 晴れ

爆音の妙子来る。

妙子N「濡れ濡れにしてねじ伏せて印鑑印鑑印鑑押せ」

家の前で停まる。

前のスナックビルのビル2階の窓、一瞬開く。

スナック女A「なに?」

窓閉まる。

妙子、ハーレーダビットソンから派手に降りる。

黒ヘルメットを脱ぐと緑色のロングヘアをなびかせる。

眼鏡越しに竜子の家を睨む。

妙子「(指で呼ぶ)いらっしゃい。2階建てでも3階建てでも建ててあげるわよ。

建てるなら若いうち」

鞭でドア叩く。

「ブーブーブー」

ハーレーダビットソンに乗っている小学生が、ブザー鳴らす。

妙子「ダメダメダメ。なにしている」

妙子、小学生たちを、追い払う。

42 竜子の家1階

居間の隣部屋

妙子と清が、お膳を挟んで向き合い座っている。

妙子N「じじい、しゃべれ。なに眠ってる。こっち見ろ」

清N「目に毒だなあ。若い女は、恐ろしい。目が、開けられない」

妙子「玄関どうされますか?」

妙子N「こっち見ろ」

清 N「こんな近くで、女性を見るのは、何年ぶりだろう。

娘以来。座頭市眠狂四郎円月殺法。名セリフ。おまえの操が、ほしい。

ぶん殴られるぞ」

妙子N「貴志、出せ」

隣の居間

いつもの通り、竜子が、昼寝している。

薄目開く。

二人の話を聞いている。

妙子「図面、見られてます?」

妙子N「目を開けろ。どこ見ているんだ。演技して」

清、目を閉じたまま、うなずく。

清N「開けろと言われても、今じゃ遅すぎた。

見たところで、分かるわけないだろう。

金の成る家を作ってくれ。

西側、出っ張り部屋。

あんた、プロの建築家で、知らないだろう。

西側に、出っ張った部屋を作ると金に困らない。

お金に不自由しない。

本当か?知らない。今回、実験してみよう」

隣の居間

竜子が、寝ながら天井見ている。

妙子「3階建てですよね?」

妙子N「こちらが、設定してくれと待っている」

清N「この図面じゃ出っ張り部屋がない。変更してもらわなくちゃ」

妙子N「営業の基本、お客様のお望み以上のサービスの提供。それが、値段高くても、

相談判断決断は、お客様自由」

清、図面見る。

清N「神様、やっと見えました。この図面は、出っ張り部屋がありません。出っ張り部屋を作ります」

隣の居間。

竜子、座り直して、ウインクする。

清、図面の下段に、書かれてある金額を見る。

「2400万円」

清N「払えない」

クレジット「第二回目」

お膳に向かっている二人。居間に、竜子。いつもの通り。

妙子、眼鏡に派手な服。

目を閉じている清。

清N「今日こそは、図面違うと言わなくちゃ」

妙子「ここに印鑑付いてください」

居間で、竜子が、寝ている。

清N「目が開けられない。若い女

妙子N「前金100万円。印鑑押せ。眠狂四郎

清N「印鑑前に出っ張り部屋」

竜子、起きている。

妙子「朱肉」

妙子、鞄の中探す。

清、頑張って、薄ら左目を開く。

妙子 「朱肉」

妙子、鞄の中から、朱肉取り出す。

清、薄ら右目を開く。

妙子「朱肉」

妙子、朱肉を、お膳の上に置く。

清、頑張って、両目開く。

妙子「こちらです」

妙子N「前金。押せ」

妙子、 図面の名前と印鑑の欄を、指差す。

派手なマニュキュア。

清が、図面一階に、赤マジックで、西側出っ張り部屋を、

書き加える。

妙子N「何するの?」

清「ここに、部屋を足してほしんです」

妙子と清が、初めて、目と目がぶつかり合う。

居間にいる竜子、一瞬、振り返る。

43 メタバース 浴室脱衣場

清と妙子が、目を合わせて抱き合っている。

見つめ合う二人。

今にも、唇と唇が、触れ合まうまで、近づく。

浴室の扉が、開き、頭にタオル、胸にバスタオル巻いた竜子が、出て来る。

竜子「いいお湯でした。ありがとう」

清が、抱いている妙子を見ると、

妙子が、人魚になっている。

妙子人魚「これからが、勝負よ」

ドボーン。

水中を泳ぐ妙子人魚。

(WIPE)

44 竜子の家 1階 台所 朝 雨

竜子が、一人、カップヌードルを食べている。

竜子しかいない。

竜子、テーブルや壁のペンキ跡を見ながら、食べる。

竜子が、コップに茶瓶のお茶を注ぐ。

竜子、お茶飲む。

45 竜子の家 1階 雨

誰もいない居間。

46 竜子の家1階 台所 雨

竜子が、お茶を飲んでいる。

47 竜子の家 2階 雨

誰もいない2階の部屋。

48 竜子の家 1階 台所 雨

竜子が、お茶を飲んでいる。

49 竜子の家 2階 雨

2階から見る前のスナック。

雨が、降っている。

50 竜子の家 1階居間 雨

竜子が、一人、テレビ見ている。

51 竜子の家 2階ベランダ 雨

ベランダの屋根の雨漏り雫。

雨の瓦屋根。

52 竜子の家 1階 居間 雨

竜子、テレビ付けたまま眠っている。

53 竜子の家 1階

クレジット「第三回目」

居間の隣部屋。

お膳を挟んで、妙子と清が、向き合って座っている。

妙子の髪型が、尖っている。服装も派手に変わっている。

清は、いつもの服装。

妙子と清の目が、ぶつかり合う。

妙子「台所を広くするということですね」

妙子、付け加えて変更した出っ張り部屋の図面を指し示す。

清「そうです」

妙子「総面積増加で、坪単価50万円として、150万増えます」

清「玄関も大きく」

妙子「玄関も大きくということで、総面積増えています。玄関なくしますか?玄関付けますか?

玄関必要でしょう」

清「ベランダは?」

妙子「なしです。欧米では、室内干しです」

清「ベランダ必要です。室内干すクリーンも必要です」

妙子「なんでもありなんですね」

清「なんでもありです」

妙子「さっそく前金振込んでいただきありがとうございます。

変更契約書です。 こちらにも訂正印お願いします」

竜子が、お茶を持って来る。

竜子「どうぞ」

妙子「いい家できますからね」

竜子「よろしくお願いします」

竜子、頭下げる。

竜子、隣の居間のいつものテレビ前にすわって、

目を瞑っている。

竜子、目を開ける。

清「ばあちゃん、帰った」

竜子、玄関に向かって、

塩巻く。

竜子「塩巻き。蹴ったっクソ悪い」

清「何?」

竜子「あんな詐欺師、もう家の中に、入れたらあかん」

清「えっ?」

竜子「家も何もかも、根こそぎ持って行かれるで」

清「前金収めた」

竜子「いくら?」

清「100万円」

竜子「返してもらい」

清「このボロボロ50年でええんか?」

竜子「あの女は、おまえの何や?」

清「建築屋」

竜子「返してもらいな」

清「返してくれるか」

竜子「私言うわ」

清「頼む」

竜子「やめとけ」

清「50年や進めな。100辺言ってもわからんな」

竜子「わからん」

清「六畳間が八畳間になるで」

竜子「うるせえ。バカ野郎」

54 メタバース

六畳間が、八畳間に変わる。

竜子、後ずさりする。

竜子「トイレどこ?」

竜子、首振って探す。

竜子、廊下に消える。

55 竜子の家 1階居間 深夜

暗闇。

竜子一人寝ている。目が開く。

起き上がり、トイレに行く。

56 竜子の家1階トイレ前 深夜

竜子、トイレ電球スイッチ押す

電球光る。

57 竜子の家 1階 晴れ

妙子と清が、お膳に向かい合っている。

変更契約書に、清が、印鑑付いている。

妙子が、変更契約書のページめくる。

妙子「こちら」

清、素直に、印鑑付いていく。

妙子「こちら」

変更契約書のページめくる。

妙子「たくさんあるんです。こちら」

妙子、指さす。

妙子「こちら」

清、間違って、朱肉の代わりに、妙子のマニュキュアの爪に、

印鑑押す。

妙子「痛い」

清が、妙子の朱肉の付いた人差し指を噛む。

妙子が、清の口から人差し指を抜く。

ポンと鳴る。

清「大丈夫ですか?」

妙子N「あほ」

清「大丈夫ですか?」

妙子、 2冊めの合意図面契約書取り出す。

妙子「こちら」

ページめくって、指さす。

清「また、図面変更すると、20万円いるんですか?」

妙子「必要となります。こちら」

清、印鑑付く。

妙子の携帯が、鳴る。

妙子「失礼」

58 竜子の家の前 昼 晴れ

妙子が、スマートフォンで話しながら、

玄関ドアから出て来る。

妙子「社長、大至急、わかっています」

田嶋理江子社長が、電話向こうで怒鳴っている。

田嶋理江子社長N「早くしなさい。早く。わかってるの。

時間遅れないで。わかってるわね。早くしなさい。遅れちゃダメ」

妙子「わかっています。早くする。遅れない。そして」

田嶋理江子社長N「早くする。遅れない。そして?」

妙子「そして」

田嶋理江子社長N「そして?」

妙子「 そして、裁判所」

田嶋理江子社長N「そう、裁判所。裁判に持ち込めばこちらの勝ち」

59 竜子の家 1階 晴れ

お膳の前に座っている清。

その横に、竜子来る。

お膳の上に置かれいる妙子の二つのスマートフォン

清が、手で、やめろのサイン。

60. 竜子の家の前

妙子「裁判所ですね」

理江子社長N「そう、裁判所」

妙子、スマートフォン切って、玄関に入って来る。

61 竜子の家1階

竜子、妙子の黒鞄を持つ。

清N「やめろ」

竜子、妙子の黒鞄を、お膳の上にぶちまける。

財布。

竜子が、財布の中身を見る。

清N「ダメダメダメ」

ガラケー携帯、タブレットiPAD

トランプ、運転免許証。

それに、ピストル。

竜子が、清の頭にピストル向ける。

清N「えっ?」

清、自分もピストルを持って、ピストルを持った

電話している妙子と向き合う錯覚に陥る。

竜子が、ピストル打つ。

ライターピストルで、火が点く。

妙子が、部屋に戻って来る。 妙子「失礼。何これ?」

62 竜子の家1階 台所

竜子が、座って二人の話を聞いている。

63 竜子の家1階 部屋

黒鞄は、元の位置。

お膳の上に、ライターピストルと灰皿。

清「ちょっと、ライター借りました」

妙子「鞄の中、見たんですか?」

清「見てない」

妙子「本当に」

清、腕組んで、目を閉じる。

妙子、目を閉じている清の額に、ライターピストルを構える。

清、目を開ける。

見つめ合い、声出して笑う二人。

妙子「火災保険の書類、置いときます」

64 竜子の家1階 台所

竜子が、壁を見つめて座っている。

座っている竜子。

一点を見つめる竜子。

(WIPE)

65 竜子の家1階 居間 晴れ

テレビ画面。

テレビ画面が、ザッピングされて、コロコロ変わる。

ガーガーと映りが、ノイズ画面になる。

ザッピングで、チャンネル変わる。

ラジオ体操の画面になる。

テレビを見ながら、竜子一人、体操ダンスしている。

竜子、音楽聴きながら、自分勝手に手足伸ばす。

声出して飛び跳ねる。

一人ラインダンス。

腿上げ。

正拳突き。

オートバイの爆音。

エンジン音が、家の前で止まる。

66 竜子の家の前

妙子が、オートバイのヘルメットを取る。

スナック窓から覗く女。

小学生たちが、通る。

妙子「ニャーンオー。フフフ」

67 竜子の家 部屋

お膳に、妙子、清、竜子が、座っている。

妙子「こちら火災保険の契約書です」

竜子「こんなものいらない」

火災保険の契約書を破り捨てる。

竜子「これも、いらない」

印鑑付いた変更契約書も破り捨てる。

妙子「どうされました?」

竜子「やめ。取引停止。やめや。誰の土地と家と思てるんや。

私の土地。所有権は、私や。出て行ってくれ。あんたに言われる筋合いはない。

やめ。やめや。出て行け。取りやめ。全部持って行け。二度来るな。

早く、出て行け。こんないらん。嘘ばかり言いやがって。持って行け。

紙くず。ここは、私の土地で、私の所有権や。あんたに言われる筋合いは、これっぽっちもない。

早く出て行け。塩巻き。全部持って出て行け。じゃべるな。出て行け。警察よび」

妙子、巻尺メジャー取り出して伸ばす。

破れ飛び散った契約書や図面を集めて、お膳の上に、

束ねて置く。

妙子、清に話かける。

妙子「火災保険は、どのタイプにされますか?」

竜子「保険はいらん。何が火災保険や。火事もなってないのに。火事は出しません」

妙子、破れ裂かれた図面を、繋ぎ合わせ、巻尺メジャーで指し示す。

妙子「こちらは、二間から八畳一間になります」

妙子が、破れた図面の上を測る。

妙子「1階、西に出っ張った部屋が、台所になります。。お風呂。脱衣場。1階に2階にトイレ。

2階キッチンLDK。3階6畳4畳半4畳半三つの部屋とベランダになります」

竜子「いいなあ。テレビここ。冷蔵庫ここ」

妙子「いいでしょう」

竜子「お値段は?」

妙子「こちらです」

竜子「いいお値段書いてはるわ。帰ってくれるか」

清「契約してるんやで」

竜子「破ってるんやん」

清「前、進まな」

竜子「当たり前や。目覚まし。いい夢見さしてくれてありがとう」

竜子、妙子に頭下げる。

竜子「帰って。来るな」

妙子「そういわれましても、契約は成立しています」

竜子「帰れ」

竜子、妙子のピンク色の髪をつかみ、引きずり回す。

清「やめな。やめろ」

竜子、妙子の髪をつかんだまま、玄関に出る。

68 竜子の家の玄関前道路 晴れ

竜子が、妙子の髪をつかんだまま、道路に出て来る。

スナックビル2階の窓から女たちが、見ている。

小学生たちが、近づいて来る。

女子小学生A「おばちゃん、どうしたの?」

清「やめろ」

竜子、妙子を、スナックビルゴミボックスに入れて、

ゴミボックス扉の鍵締める。

竜子「ここは、私が、守ってきた私の土地や。私の家や。誰にも手渡さない。よく覚えておけ」

竜子、仁王立ち。

小学生たち、拍手する。

女子小学生B「かっこいい」

69 竜子の家 1階 雨

妙子が、頭に包帯、左目に絆創膏を貼って、お膳に清と向き合っている。

妙子「お母様は、病院ですか?」

清「病院です」

妙子「 一度、社長と会っていただけますか?」

清「えっ?どうして?」

70 メタバース(仮想空間)内 新築3階建て 雨

清の完成された新築3階建ての家。

妙子が、新築玄関前に、傘を差して歌を唄う。

歌「あめふり」

妙子N「あめあめ ふれふれ かあさんが

じゃのめで おむかい うれしいな

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

かけましょ かばんを かあさんの

あとから ゆこゆこ かねがなる

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

あらあら あのこは ずぶぬれだ

やなぎの ねかたで ないている

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

かあさん ぼくのを かしましょか

きみきみ このかさ さしたまえ

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

ぼくなら いいんだ かあさんの

おおきな じゃのめに はいってく

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン」

71 メタバース内 新築3階の部屋 晴れ

妙子、初音ミクスタイル。

曲「あめふり」に合わせて、

準備運動。

妙子、走り出す。バク転バク宙して、天井を蹴る。

新築3階の寄棟屋根が、吹っ飛んで行く。

妙子、壁にパンチパンチパンチ。

壁に穴が空いて行く。

バク転キック。

壁が、吹っ飛んで行く。

妙子、曲に合わせてダンス。

回りながら、壁にキックキックキック。

穴だらけの壁の横に立つ妙子。

小指を突き立てて、軽く穴だらけの壁を押す。

壁が、ゆっくり落ちて行く。

妙子「バイバイ」

妙子、バク宙して、床に穴開ける。

72 メタバース内 新築2階ダイニングキッチン

2階の天井に、妙子の両足が、突き出ている。

73 メタバース内 新築3階の部屋

妙子、曲に合わせて、床を踏み続けて、直線に穴を開ける。

バク宙バク転して戻り着地。

床を引っ張り返して、持ち上げる。

頭上にかざす。

妙子「あばよ」

74 メタバース内 レインボーブリッジ

レインボーブリッジの眺め。

レインボーブリッジから妙子が、頭上に壁を、

掲げ上げているのが見える。

男子小学生「あれなに?」

母親「工事しているの」

男子小学生「たてているの?こわしているの?」

母親「壁を持っているから、作り直しているんじゃない」

男子小学生「新しい家がたつといいね」

母親「そうね」

75 メタバース内 新築3階建て3階

妙子が、頭上に持ち上げた床を、

海に投げ捨てる。

妙子、崩れた3階床に座り、足を投げ出して海を見る。

レインボーブリッジの親子に手を振る。

76 メタバース内 レインボーブリッジ

親子が、妙子に向かって、手を振る。

男子小学生「お腹空いた」

母親「行こう」

男子「うん」

77 メタバース内 新築の3階

妙子、ツルハシを持って、2階ダイニングキッチンに舞い降りる。

78 実際の新築の2階

妙子、ツルハシを振り回して、

壁や床、キッチン、蛇口、コンロ、窓を、

次々と叩き壊して行く。

妙子「なにが、西側出っ張り部屋」

ツルハシで、壁に床に、穴を開けて行く。

79 メタバース内 新築の1階

玄関ドアとシューズボックス上の金魚鉢だけになる。

妙子、ツルハシを肩に担いでいる。

80 竜子の家の前 晴れ

玄関ドアから妙子が、ツルハシを

担いで出て来る。

81 メタバース内 夕焼け

玄関ドアだけの家。

玄関ドアの外から、竜子が入って来る。

竜子、工事用のヘルメット帽をかぶり、作業員服装で軍手をして、

セメント砂の入った手押し車を押して来る。

竜子、押して来た手押し車を、

手すりグリップを上に上げて、セメント砂を地面に放り出す。

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