シナリオ PART21

91 会社駐車場 朝

朴が、並んでいるタクシーの間を、自転車押して帰る。

組合運転手たちが、運転席から、叫ぶ。

組合運転手A「裏口から帰れ」

朴、表玄関に向かう。

組合運転手B「社長、行ってらっしゃいませ。ハッハッハ」

皆、高笑い。

組合運転手C「今日もコンビニ弁当か」

皆、大笑い。

組合運転手D「社長」

組合運転手E「お偉い様のお帰りだ」

組合運転手F「出勤だけが、取り柄」

組合運転手G「嫁さん、逃げた」

組合運転手H「事故なし」

組合運転手I「生活、なんとかせえ」

組合運転手J「ボーナスくれ」

92 表玄関事務所前

辰巳大蛇社長が、笑って立っている。

朴、一礼して、自転車押して通る。

組合運転手A「社長」

朴、振り返る。

辰巳大蛇社長と組合運転手Aが、事務所内に入って行く。

ラクション音。

「プー」

朴、再度振り返る。

組合運転手たち、運転席から出て来て、腹かかえて大笑い。

93 朴の自宅前

自転車には、コンビニ弁当箱袋。

朴は、自販機で、缶コーヒーを、飲んでいる。

94 朴の自宅

朴「ただいま」

長女朴和希「おかえり」

朴一根の長女和希が、デジタルピアノを持っている。

朴「来てた?」

朴和希「ピアノ持って帰るわ」

朴「どうしてる?」

朴和希「みんな元気や」

朴和希、グルグル回って、踊りながら話す。

朴和希「まだ?何とかしてよ」

朴一根「まだ?何とかしてよ」

和希、強く言う。

朴和希「まだ?何とかしてよ」

朴一根「まだ?何とかしてよ」

和希、さらに強く言う。

朴和希「まだ?何とかして」

和希、グルグル回って、

鬼しかめっ面になる。

朴一根「まだです」

朴和希「何でですか?」

朴一根「まだです」

朴和希「何年経っているんですか?」

赤鬼和希のしかめっ面。

朴一根「10年」

朴和希「10年ひとむかし。さようなら」